―後半―
――――――――――――――
目次
若者の人生の選択肢を増やしたい。
脇さんの「やりたい事」を教えてください。
学生の可能性
総務省の採用担当をやらせて頂いている時に、「応募者の想いが伝わってこないなぁ」と思う事が多かったんです。最初は「もっと自分出せよ」と言っていましたが、ある時、その就職活動自体の「構造」に疑問が湧きました。
学生にとっての就職活動って、なんとなく社会から、「就職しなければいけない」という状況に置かれがち。そのプレッシャーで「決めなくちゃ」みたいな状況になり「志望動機」をひねり出しながら一所懸命に話してくれているのかと。さらに、そこで出会う大人が「採用権限をもっている人」なわけです。
その立場で「自分出せよ」と言うのは、私のエゴだなと感じました。そこから「じゃあどうやったら、自分と学生がフラットな関係になれるか」と考え始めたんです。
結論は、多くの学生が、具体的な「想い」や「結果」を持っている「大人」と「接点」を増やす事。
そして、選択肢を知り、その中から選んでもらえれば、「想い」も具体的になるんじゃないかと。
→学生全体の活性を見た素晴らしい視点ですね。
私も人事統括として新卒の採用をしていた際には「ご縁があっても、無くても日本を一緒に良くしていきましょう」と言うようにしていました。
「採用の有無に関わらず、その人が自分をキャッチして活躍して欲しい」という発想ですね。面接では「合う合わないは事実あるから、出来る限りありのままの自分の言葉で」という前提を定義。選考の視点と共に、学生への付加価値として「思考をブラッシュアップする機会」という視点を持っていました。マッチングの度合いは就業した後も重要ですしね。
誰と出会うか
学生を見ていて感じるのは、起業する学生は、親や周りで同じように起業している人がいるんです。「こういう選択肢があるんだ」って勝手に背中を見ている。逆に、抽象的な選択肢の中からでは抽象的な選択しかできないんじゃないか、と思いました。
→すっごくわかります。環境においての情報格差は存在していて、「選択肢、考え方、心理面」など多岐に影響している点は私も課題視しています。
言い訳はできないように、「地元が一緒で、活躍してる人」に会ってもらう。それなら学生も「俺も頑張ろう」ってなれる。先輩社会人にとっても、地元の後輩に対する思い入れは強いだろうと考えました。
これがすごくいい会になったんです。ほんと「出会い」や「環境」は重要だなと再実感しました。
「やりたい!」の力
国という観点から考えると、少子高齢化で確実に日本人は少なくなります。国の発展を目指す場合、これからは一人一人がパフォーマンスを上げていく事が重要です。
「想い」という視点でいえば「やらなければならない」と思っている状態と「やりたい」という状態では全然パフォーマンスが違うと考えています。自分の中の「やりたい」を見い出し、自分で選択してやっていく事がいいのではないか。その「やりたい」が、色々な大人と会う中で形をなしていくんじゃないかって思うんですよね。
→鋭いですね。心理的な視点でも「have to」と「want」の混同という注意点が存在します。
集団帰省をやってみたい。
宮崎の学生と話していて、みんな口をそろえて言っていたのが「宮崎に帰っても、県庁か銀行かJAとか新聞社だよね」というものでした。そんな事は無くて、その他にも「いい会社や、魅力的な人」はたくさん存在します。地元にもめっちゃイケてる人がいるのに、学生達は「知らない」。学生たちが「なんとなくのイメージ」で地元を見てしまっていると感じました。
→大人にも当てはまりますね。
それだったら、その人たちに会える場があればいい。できれば地元で開催したい。ただ、人と会える場だけではなく、その地域がもっている雰囲気や力も感じてもらいたいからです。その人の良さって、都内の会議室より、その人が「生きている場所」でこそ伝わるものがあると思うんです。
ただ、学生を地元に呼ぶって交通費かかるから大変です、だったら、「お盆と正月」なら田舎に帰ってるんじゃないか、かつ、東京だけでなく大阪や福岡に行った人も、帰ってこれる!と考えました。
→学生にとっては、選択肢を得て具体化できる機会でもあり、「地元の魅力的な大人」を知る機会にもなる。地方にとっては、地元の企業に優秀な学生が入社してくれる可能性が高まる。そして地方と学生が「理解し合う機会、繋がる機会」になりますね。実施しない理由がない。
⑦ 「今の地元」を知ることができる仕組み へつづく
「今の地元」を知ることができる仕組み
私はよく「関係人口を増やしコミュニティーの形成促進ができないか?」ということを考えています。全て仮説ですが、今まで紹介してきた動きって、いいコミュニティーの復活になるんじゃないかと考えています。
都会と地元、地元と地元
私は全国で飲み会をしています。東京では「素敵な人が素敵な人を連れてきてくれる流れ」が出来つつあるのですが、地方で活躍している方に関しては、自分からアプローチしないと繋がれないのが現状です。
仮に、47都道府県を月1で回っていくと、1つの都道府県には4年に1回しかいけない。そんなオリンピック野郎に何が出来るのか?結論は「人と人を繋げる事」でした。東京で周りにいる凄い人たちと、地方いる凄い人を繋げる場を提供していく事。
→オリンピック野郎(笑)。
私自身が驚いたのは、都会は人間関係が希薄で、地方は人間関係が濃密と言われているけれども、それは小さなグループの中の話。地方には小さなグループがたくさんあっても、その面白い人たちが繋がっていないんです。それは、むちゃくちゃもったいない。
今回は私が外から来た事で「わざわざ東京から国家公務員が来るなら、行ってみようかな。」って感じで集まって頂けたと仮定していますが、その会で、地元の人同士が繋がっていったのはすごく嬉しかった。
これって、学生にも当てはまると考えています。外に出て行った学生が帰ってきて、地元に残った学生とそれぞれの「想い」を共有し合える場。更に、帰った時に「地元の大人に会える場」があるってとっても大切だなと。
地元のイメージをバージョンアップ
活動の中で大きな課題を見つけたんです。地元を離れた大多数の人の「地元のイメージ」って、実は「家」「学校」「バイト先」「カラオケ」「ゲーセン」くらいしかないんじゃないかと。それって、18歳までの地元でしかありません。
じゃあ、10年、20年たって「今」のリアリティある地元のイメージを持てているか?皆さんどうでしょうか?昔あったお店もなくなっている可能性もある。「実際の地元」と「イメージの地元」が乖離しているケースが多いと考えています。
→すっごく解ります。今、私自身が地元や栃木を知ろうとしても、なかなか知れる機会が無い。私は行動しまくってますが。みんなそうできる訳ではないでしょうし。
地元の「人」
大学卒業後に一時的に地元に帰ってくると、コミュニティーのバージョンアップが図れない限り、高校までの人脈でしか人と会えない。さらに、中学高校の友達も20代中盤くらいから徐々に結婚し始め、子供が出来て家族が出来ると、優先順位がどうしてもそっちになっていく。
いよいよ、コミュニティーが希薄になっていく訳です。この話って、自分だけの問題ではなく47都道府県、国全体でも言える事。
田舎育ちの都内で暮らす人のコミュニティーが希薄になるはマズイですよね。そこを、もっと深められないか。帰った時に学生時代の友人以外の地元の人と集まれる場があると、本人の「人生の選択肢」も広がりやすいし、自然と地元の話になるので、情報交換の場になる。
→私もコミュニティ作りを調整しています。その過程でお祭りの価値に改めて気づいたり。
近くにいる味方、遠くにいる味方
これらの話は、「地元に就職してください」って言いたい訳ではないんです。遠くにいる味方っていうのも強いからです。例えば「国連の中に入って、世界全体の事を見渡しながら、地元の事を思う」こういうのだっていいですよね!
これは「関係人口」という概念ですが、「想い」を共有している人が世界にどれだけいるか。これは、今後の地方にとっての強みになってくと思います。
→関係人口の概念は大切ですね。その視点があれば、共同体にありがちな「排他的になる感覚」は多少薄れるかもしれません。これって会社経営でも同じなんじゃないかって思います。
現代の共助システムとなる場
都市と田舎の血の繋がり
昔は、子だくさんな家庭も多かった。長男が「地元」で、その下の子達は「都市」に出稼ぎにでる、この場合、地方と田舎に「血の繋がり」があったという見方もできます。
現代は1人っ子か2人兄弟の家庭が多い。親が年老いて死んでいくと、都市と田舎の繋がりがいよいよやばい。
それに対して、血のつながりではない、人と人との関係性をちゃんと紡いでいかないと、分断されていくんじゃないかと懸念しています。※じゃあ、分断が悪いのか?という議論もありますが。
自助・共助・公助
行政からすると、コミュニティをつくっていくというはすごく大切な事。「自助・共助・公助」があって、自分で解決できない時に、共助がない場合は、公助しかなくなってしまいます。「自分ではできない=自治体がやってくれるんでしょ?」ってなっちゃう訳です。
公助に関しても「すぐ出てくる」訳ではないんです。なぜなら、皆の税金から成り立つものなので。マクロでみると「欲しい、欲しい」という一方で、自分たちが苦しんでいく形になってしまいます。それってやばいですよね。
→そこに対して、脇さんは、公助としての公務員の可能性を高める(=税金を使う機能性を上げる)事に挑戦しつつ、共助としての「コミュニティ」を作る事にも挑戦しているという見方もできますね。
会える公務員
まだ思考中ですが、AKBみたく「会える公務員」をどうつくっていくかって大切だと思います。人って実際に会う事で、当然ですがイメージが膨らむ。そうすると「公務員ってこういう人なんだ」じゃあ、「一緒にどうしていけばいいのか?」「何が出来るかな?」って考えていけるんじゃないかと。
実現に向けては、公務員と一般の方、双方の「姿勢」が鍵になると考えています。一般の方に対して「批判しかしない人」「無理だと思考停止している人」が対応しても「結局、聞いてもらえない」ってなるし。公務員に対して、「一方的なお願いをするだけの人」も違う、それぞれが「できる事」を話し合えることが重要です。
まずは「自分にできる事は何か?」って考えられる人でないと成り立たない。そのうえで、「これってコミュニティーで解決?公で解決?」というのをスムーズに議論できる機会を作っていけたら素晴らしいなと。批判でなく自分にできることを持ち合いながら、「一緒にやりましょう!」そういう空気感をつくりたいです。
→会社も含めた、あらゆる共同体の課題ですよね。仕組みが整っても、思考や姿勢が追いつかないと、その共同体を建設的に運営したり、発展させていく事は難しい。両方重要です。
難しいので、無理って諦めちゃう人も多いですが、諦めずに挑戦し続けている人達もいる。
新たな共助の形(現代流のソフトな繋がり)
昔はご近所づきあいがありました。相手が困っていたら「お互い様だから」といって助け合う「助け合いの精神」があったともいえます。
それは、個々の「繋がり」をもたなければ実現できない一面もあるので、それが「窮屈だ」と感じて、都会に行き「匿名化できる環境」を選ぶ人も増えていった。
現在は、再度、その「繋がり」や「助け合いの精神」に再度価値を見い出している人が増えてきている気がします。今やインターネットやSNSの進化で、一人一人がリアルで会わなくても繋がれる時代になりました。今までと比べて、もう少し「ソフト」な感じの付き合いが可能になってきたんです。
この関係性は、「距離的な制約」がなく、ご近所っていう「場所の概念」もない。「人と人との距離感」で作れるんです。話したい時に距離が関係なく1秒で会話出来てしまう。
「こんな事で困ってる!」と相談すると「こんなやり方がいいんじゃないか」「こんなのできるよ」ってすぐに会話ができてしまう。
→実現できる環境があるのに、意識や習慣が追いつかず、活用できていないケースは多いかもしれませんね。今の環境を前提とした「発想」と「繋がり」を作っていきたいですね。
そうです!その場合、前例を見ていてもしょうがない。そのインフラが整って無かった時代の例なのだから。
今は、個人がむちゃくちゃ輝ける時代になった。大きな会社に入らなくても個人で活躍できるし、繋がれる。その繋がりの多さも可視化もされています。
Facebookで「あの人と友達なんだ」というのが安心に繋がったりもします。その人の「繋がりや信用」が見える化されている。いよいよ、個人が活躍できる時代なんです。※もちろん、無理に個で活動しろとは言っている訳ではありません。
このように僕らの時代は、せっかく誰もが情報を発信して「世界と繋がれる時代」なんだから、「想いがある人達が繋がり、行き来できる場所」があるって本当に大切な事だと思っています。
→「ツールの進化」と「人々の意識」の差を少なくする「なにか」を見出したいですね。
また、新たな時代になってから見えてくる重要点や注意点も追っていく。
⑨ 潜在価値の価値化 へつづく
潜在価値の価値化
私は「価値が本当はもっとあるのに、見えていないもの」に対して、その価値を再定義する事を意識しています。「潜在価値の価値化」。価値がこれくらいだろうと思って、見捨ててしまっている価値はたくさんあるんです。
「新しい事やりましょう」というよりは「本当は価値あるはずなのに、ちゃんと見えていないから、見せていきましょう!」ってイメージです。そういう時、私は凄くワクワクする。これは、いろいろなものに当てはまるので、「どうやったら、実現していけるか?」っていうのをずっと考えています。
繋がりたい
今までお話ししてきた通り、頭の中で「これやるとすげぇ面白くなるんじゃないか」って思っている事はたくさんあります。そして、私は思った事を実行すると決めているので、これから、どんどん実施していこうと考えています。
とはいえ、1人ではできない話もいよいよ増えてきました。「世の中を良くしたい」というコンセプトに共感してくださる方達と繋がって、一緒に活動していければ、なにより嬉しいです!
■「よんなな会」
・次会開催 2017年11月12日(日)@渋谷ヒカリエ
・登壇者|①キングコング西野さん / ②伝説の舞妓と呼ばれた岩崎究香さん・③全国最年少市長・大阪府四條畷市・東市長 /④島根県邑南町職員・寺本英仁さん
・よんなな会|ホームページ http://47kai.com/
・よんなな会|FaceBookページ https://www.facebook.com/groups/1502192336720896/
まとめ
◆脇さんの活動
脇さんは「目の前のこと」に対する問題定義からはじまり、改善に向けた「思考と行動」を繰り返す中で、対象範囲を「社会」にまで繋げている印象でした。身近な事から動いていく点は、多くの方の参考になるでしょう。
◆なぜ?
なぜ、彼は固定概念に囚われずに、積極的に活動できているのか?また、多くの人が「そういうものだ」「どうせ無理だ」と思考停止になりがちなところを突き抜けていけるのか?
私が感じた要点は3つでした。一つは「法解釈から立法へ」という「発想の転換」を自らおこなえた経験から得た「改善意識」。もう一つは「法解釈の経験」を活かした固定概念に囚われない「多角的な解釈」。そして、ご自身の「人生や仕事における時間」を「何の為に使うか?」という問いからいきついた、自分と世の中が繋がっているという「共同体視点」。
これらが相まって、彼は積極的に活動し、変化を生みだしている様に感じました。
◆私達の課題
その変化の積み重ねが、「地方」や「国」の課題解決となり、「変革」になる可能性は0ではないハズです。さらに、その「変革」の可能性を高める手段の一つに、「民間・行政・個人が知恵や労力を出し合う」という選択肢があります。
家庭や職場、関わる地域などに存在する「私の課題」「私達の課題」。それらの身近な課題に対して、我々1人1人が「諦めてしまう」のではなく「ちょっと良くする」という感覚を持てるかどうか。その際、「自助、共助、公助」という視点は視野を広げてくれるでしょう。
「凄くなくてもいい。ちょっとでもいい」。まずは、「自分なりにできること」からやってみてもいいのかもしれませんね!
みなさんはどう思いましたか?
―後半―
―前半―