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障がいのある方と社会の橋渡し |一般社団法人Bridge|とちぎのSocialGood
今回は下野市を中心に栃木県内で、障がい者と地域の支援を行う「Bridge」をご紹介します。
目次
代表理事の山口さん
「障がいのある方と周りの環境を含めて、『誰もが暮らしやすく、活きる社会をつくる』ことを目指しています」
このように話すのは、一般社団法人Bridge 代表理事の山口理貴さん。
山口さんは大学卒業後、NPO法人やハローワークで障がい者の支援に携わり、2018年にBridgeを設立。「社会と共に“障がい”について考え、誰もが暮らしやすく、活きる社会をつくる」ことを理念とし、下野市を拠点に活動しています。
障がい者の支援だけではなく、当事者を取り巻く環境も含めて支援してきた十数年間。
少しずつ積み重ねてきた活動から生まれた想いは、理念に色濃く反映されています。
山口さんはどのような想いで、どのような活動を展開しているのか、そして、活動を通して何を感じてきたのか。Bridgeのソーシャルグッドな活動をお伝えします。
活動内容
障害者雇用コンサルティング
従業員が一定数以上の場合、事業主は障がい者を雇用する義務があります。
障がい者の就労の機会は着実に増加している一方で、受け入れる企業が戸惑いを感じる機会も増えているんだそうです。障がい者と関わったことがなく、イメージができない、もしくは偏ったイメージを抱いてしまう担当者もいると山口さんは話します。
「障がいのある方を雇用することに対して、言葉も文化も分からない“外国の人”が来るような感覚だという意見もあり、確かにそうなんだろうなと思いました。イメージができないと接し方も分からないし、物事がなかなか進んでいかない印象です」
Bridgeでは、障がい者のいる施設や企業への見学を行い、企業の担当者が現実的なイメージができるようにサポートしています。企業に所属する障がい者と従業員の両者に、働きやすい環境作りを支えているのです。
障害者指定特定相談支援事業
障がい者の就労を支援する福祉サービスがあり、サービスを受けるには、本人にとって妥当なのかを証明する計画書が必要なんだそうです。
「この人にはこういう場所で就労訓練ができたらいい。生活を成り立たせられたらいい」といった計画書の作成もBridgeの事業の一つ。
「この事業は障害者雇用コンサルティングにも関わってきます。働いてほしいと思っている企業の情報だけではなく、どういう人たちが働きたいと思っているのかを把握する機会にもなっています」と山口さん。
障がい者が必要な支援を受けられるように調整する過程で、相談者のことを知り、雇用を考えている企業へと適切な情報を提供する。「障がい者と企業」両者の立場を知っているからこそつなぐことができるのでしょう。
コミュニティ事業
コミュニティ事業は「ツバキヤ」という古民家から始まりました。
山口さんの祖父が住んでいた古民家は、リノベーションにより「ツバキヤ」へと生まれ変わりました。Bridgeの事務所を兼ねるこの場所は、障がい者も含めた地域の人達との交流が生まれる場となりました。(コロナ禍のため現在はBridge事務所としてのみ利用)
山口さんは「人と人を繋いでいきたい」と想い、知り合った地域団体と障がい者福祉施設との繋ぎ目になり、障がいのある方が地域に参加するきっかけを模索していきました。
地元で行われた「かかし祭り」では、近くの福祉施設やリハビリ施設に「よかったら作品を出品してみませんか」と参加を呼びかけたこともあるそうです。
「作品を見る人に対し、障がい者が作った作品であることを必ずしも前面に出す必要はないし、当事者が地域に参加する時、常に”障がい者である”必要はないように思います。協力者、制作者、働くなら従業員、というように、当事者も周りにいる人たちにとっても、当たり前の存在で居られる関係を大切にしたいと思っています」と山口さん。
Bridgeは、障がいのある方も、そうでない方も、同じ視点で地域に参加できるよう橋渡しをしているのです。
活動への想い
これまでの活動や考えが色濃く反映された理念
Bridgeは「社会と共に“障がい”について考え、誰もが暮らしやすく、活きる社会をつくる」ことを理念を掲げて活動しています。この理念は山口さんが大学卒業後、約8年間勤めた「NPO法人 那須フロンティア」での活動が色濃く反映されているようです。
「那須フロンティアでは、就労支援や地域支援を行っていました。その頃から当事者の支援はもちろんだけれども、まちのなかでどう生活していくだとか、地域がどのように当事者と関わっていくのかなどを考えていました。社会と共に障がいについて考えてきたことが、今でもそのまま理念として受け継がれているんだろうなと思います」
また、障がい者と周囲の環境についても、理念を交えながら話してくれました。
「障がいのある方が、仕事や暮らしから様々な広がりをみせていくときに、支援者が常に側にいるわけではありません。当事者と地域との関係、人と人との関係、それぞれの結びつきを考えると、どちらかが無理している状態では続かないと思うんです」と山口さん。
企業も含め地域社会と協働する立場にも立ち、社会に対しても必要な支援を届ける大切さを実感してきたことで「社会と共に障がいについて考える」という活動の全体像ができあがっているといいます。
無理なく、自然な形で暮らせる環境作りには、地域で暮らす人たちとの連携が欠かせないようです。
地域に欠かせない支援者の存在
宇宙をモチーフにした絵画を何百枚も描いている方が、ツバキヤで開催した芸術祭に出展したときのことです。その方は入院生活が長く、作品の展示やオリジナルTシャツ制作など、自身の作品を世に出すのは初めてでした。
「芸術祭に出展することを病院の担当者がご家族に知らせてくれて、オリジナルTシャツを買ってくれたことがありました。制作したTシャツが、ご本人とご家族の関係を繋げる一つの機会になったこと、とても嬉しいエピソードでした」と山口さん。
一方で、これまでと違った刺激のせいか、展示会の後、その方は少し体調を崩した事もあったといいます。
「やはり我々の役割は、きっかけを作るところまでだなと思いました。反動も含めて病院さんの支えがあったからこそ、僕たちも参加していただけませんか?と言えました。必要な支援を受けながら参加してもらうことは、すごく大切だと思う出来事でした」と、山口さんは当時を振り返ります。
必要な支援を受けられる体制が整っていることで参加できたり、参加してもらう団体が困ったときに相談できたり。そうやって、お互いに支え合える関係があれば、上手くつながることができるようです。
間にいるから見えてくる、つなぎ目になれることの面白さ
山口さんは、障がい者と企業、地域活動をしている人たちとの「つなぎ役」になれることがとても面白いといいます。
「企業コンサルティングにしても、コミュニティ事業にしても、つなぎ目になっているとお互いのちょっと困った感が見えるんですよ。間にいるからこそ『ここ、つながるんじゃないかな!』と分かり、先の展開を想像できるような感覚が面白い」と山口さん。
地域のこと、障がい者のこと、その両方を知っているからこそ、つなぎ目や課題解決への糸口が見えてくるのでしょう。
「きっかけが無いだけで、つながっていけば、あとは続いていく。実はそれくらい地域の力はあると思っていて、間に入らずにやり取りしてもらう形が一番いいかな」と、つないだ後のことについても話してくれました。
Bridgeという名前には、「橋渡し」という意味が含まれています。障がい者や企業、福祉施設などの地域で暮らす人たちへの橋渡しは、今後も広がっていきそうです。
今後の展望
『地域の人たちと一緒に考える中で、自分たちができることを実施する』
「参加できるきっかけを作りつつも、お互い無理しすぎないことは重要かなと思っています。自分から働きかけられる場所もあるし、安心できる場所もある。ぬくもりもあるけれど、挑戦できるような、そんな暮らしやすい社会であることが大切なんだと思います」と山口さん。
さらに、理念の行先にあるという緩急剛柔な社会づくりについても話してくれました。
「人と社会との架け橋になることが我々の社会づくり。【緩急剛柔】という言葉が当てはまるかと思うのですが、時には寛大に、時には必要な厳しさもあるような、相手に合わせて自在に動ける社会が良いように思います」
地域の中で「障がい」に関する課題の共有、協議をする場に居続けられることを大切にする。地域社会から相談してもらえる・当てにされる存在でありたいと話す山口さん。これからも様々な架け橋をつくっていくことでしょう。
団体の基本情報
団体名 | 一般社団法人 Bridge |
活動ジャンル・テーマ | 障害者雇用コンサル、障害者支援、地域支援 |
活動エリア | 下野市、栃木県内 |
設立年 | 2018年 |
スタッフの数 | 5名 |
住所 | 下野市下古山976番地 ※私有地となりますので、 無断での立ち入りはご遠慮ください。 |
メールアドレス | info@bridge-t.net |
団体HP | https://www.bridge-t.net/ |
団体SNS | https://www.facebook.com/bridge.tsubakiya/ |
編集部コメント
障がい者だけでなく、企業や団体を含めた地域全体との関係を考えて活動されているBridgeさん。活動の軸となる理念には、山口さんのこれまでの活動が色濃く反映されていました。
今後もブレることなく、ソーシャルグッドな活動が続いていくのだと思います。
人と人、人と地域をつなぐ架け橋が、自然な形でどんどん出来上がっていきそうです!
Bridgeさんの活動をこれからも応援し続けたいと思います!
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この記事を書いた人
藤本尚彦
リサーチ・ライティング担当
県南エリア在住
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