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oneclass(ワンクラス)②|栃木市|ネガポジ転換論
地域や組織などローカルなコミュニティに存在する様々な課題。それらをどう改善していけばいいのか?
具体的な取り組みから、解釈や改善行動などをアップデートしていく「ネガポジ転換論」。
今回は、 栃木市立国府南小学校で展開しているプログラム「oneclass(ワンクラス)」の第二部をお届けいたします。
目次
2019年度の活動
2019年度の僕が担当した「課題解決授業」では、国府南小学校をPRする授業を行いました。
まずPRできる学校の良さを調べるために、家族や卒業生などからヒアリングをし、ワークショップ形式にて絞り込みをおこないました。
そのワークショップで最終的にたどり着いたフレーズが「小規模校だからこそ」でした。つまり、児童や家族、そして卒業生までもが、小規模校ならではの素晴らしさを理解していて、それがこの学校の強みになっていると認識していることになります。
そこで、小規模校ならではの取り組みをPRしていこうという話になり、下記の手段にて情報発信する事にしました。
・校庭アート
校庭をアートキャンバスとして捉えて、学校にあるものを使ったり、児童や親御さんや近隣住民の方々にアートの一部になってもらうなどして作品を描きました。
児童に学校のPRになるアートの下絵を考えてもらい、イラストレーターの方に黒板でリアルタイムに描いてもらいながら、イメージを膨らませていきました。
実施に校庭に描くのはとても大変で、精度を上げるために校庭をマス目状にグリット化し、目印となるピンを打ち込みました。
当日、児童・保護者・近隣住民とSNSを見て協力してくれた方は170名にも及びました。全員で白線を引き、物を配置し、最後に人文字となってアートを完成させ、ドローンで空中から撮影しました。
この様子はテレビ・新聞に大きく取り上げられ、小学校のPRに繋がりました。
・チラシ
学校の素晴らしい点や、これまでの一連のoneclassも含めた活動を児童が自ら編集しA4一枚にまとめました。これは印刷をして配布されました。
・スライド
こちらも学校の素晴らしい部分をパワーポイントでスライドにして、プレゼンの様子を映像として撮影し、YouTubeで閲覧できるようにしました。
・紙芝居
僕の仲の良い編集者の方が国府南小の小説を書いて下さいました。それを要約し紙芝居にすることで、物語として国府南小の良さを伝えられたらと思い、児童たちが描いた絵で紙芝居を完成させました。
こちらも読んでいる風景を動画で撮影し、YouTubeで閲覧できるようにしました。
上記のコンテンツを、同じ国府小学校という名前の全国の学校に拡散させていただき、学校間の交流まで発展しました。
プログラミング体験授業
夏休み企画として実施したのがプログラミング体験授業です。
プログラムの基礎と、プログラムから物を動かす楽しさを体験することで、将来の仕事への関心を持ってもらえたらと思いました。
また、情報やプログラムに関して専門的な技術をもった方々から教えていただき、論理的な思考力や発想力、創造力を養うことも目的にして授業がおこなわれました。
いざ授業が始まってみると、児童の飲み込みは早く、iPadを使いプログラミングをしてガジェットを実際に動かしたりなど、楽しく体験していました。
アンガーマネジメント授業
コミュニケーション能力を養う一環で、怒りの感情をコントロールをする「アンガーマネジメント」の授業を実施。
心理学の講師を招き、様々な状況からの怒りの発生・増幅・感情のコントロールを学び、気持ちを言語化する大切さも学んでもらいました。
自身の感情の正体を知ると同時に、他人の考え方を知ることで、お互いを許容しあえるようになる。
児童たちの中で、何かきっかけが生まれてくれればと思います!
ポスターデザイン教室
夏休みの課題でもあるポスター制作を、プロのデザイナーやイラストレーターのアドバイスを受けながら進める授業。
ポスターをデザインする際の考え方や、ポスターの役割などを理解してから実際に制作することで、今までと違った視点で制作することができます。
また近隣中学校の美術部の方も手伝いに参加してくれて、授業終了後には中学生がデザイナーの方にデザインの仕事についてヒアリングするという、今後の進路についてヒントなるような座談会も実施しました。
変化、結果、どうなった
oneclassが起こした変化
プロジェクトが始まってから2年余り。
oneclassのプログラムによって学力の向上に繋がったかは定かではありませんが、決定的な変化としては、
1.答えがないことを楽しむようになった
2.アイデアからアウトプットへの精度が上がった
という、2つがあげられます。
1. 答えがないことを楽しめるようになった
学習指導要領が存在するように、小学校の授業はのゴールが明確にあり、ゴールに向かって授業プロセスを経ます。
しかしoneclassが実践する授業は、やってみなければ分からないことが多いです。校庭アートもぶっつけ本番で、最大限の準備はしましたが、当日は出たとこ勝負の部分あもありました。
実際のビジネスの世界では、前例の無い取り組みにチャレンジすることも多々あります。
不確実な中でも結果を出すためにやり切る重要性と、そのプロセスをみんなで楽しむことが良い結果をもたらすことを実践値として共有することが、普段学校で学ぶこととの差別化になり、そういうやり方もあるんだと、楽しんでくれるようになりました。
2. アイデアからアウトプットへの精度が高まった
現在3年目ですが、年数を重ねることにより、児童たちから上がってくるアイデアの質とスピードも高くなってきています。
クリエイティブが生まれるプロセスを数年に渡り実践してきている証拠で、アイデアを出すだけでなく、ちゃんとアウトプットすることの重要性も感じてもらえています。
そして地域が動き出した
上記2つも大きな変化ですが、最大の変化は「oneclassを通して地域が繋がりアクティブになった」ことです。
僕が協議会でoneclassを提案した3年前は、地域住民の中には諦めの空気が漂っていました。「ここで何か仕掛けても何も変わらない」「この地域は衰退するだけだ」と。しかし現在は、そのような空気は薄れ、地域住民が繋がり出しています。
その具体例として国府南小の校長が掲げた「地域と共にあるコミュニティスクール構想」があります。oneclassだけでなく、他の方々が実践されている教育プロジェクト同士を横につなげ、そして横断的に実践していきます。
僕が担当する部会では、国府南小内にカフェを作りました。
ここは空き教室を利用し、児童・先生・地域住民が気軽に集まる場として設置し、「誰もが先生誰もが生徒」と位置付け、自身の得意なことをシェアして新たな学びに繋げようという企画です。
例えば僕がデザインを教えても良いし、お年寄りが地域の歴史を話しても良いし、子供がYouTubeのレクチャーをしても良いのです。
上下関係なくフラットに誰もが対等にこの地域を想い、活動できる場所。
卒業した中高大学生も参画しています。
一過性の企画で終わらせず、この地域の文化として根付かせるために、続けていきたいと考えています。
あとがき
oneclassはまだまだ発展途上で、走り出したばかりです。実際には児童数は増えてはおらず、むしろ減少傾向にあります。
児童数の増減に一喜一憂せず、この地域の新しい文化を生み出してるプロセスを楽しみながら、長期的な視点で学校づくりと地域づくりの両方に取り組み続けたいと考えています。
いかがでしたか?
地方では、学校の廃校や統廃合が進んでいる地域も少なくないと思います。価値を見いだす視点、具体的な改善策など、少しでも参考になれば幸いです。
また、問題発見とその解決プロセスは、全ての方に参考になったら嬉しいです!
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この記事を書いた人
青柳徹
「ネガポジ転換論」担当
県南エリア出身
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