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青柳徹(しもつかれブランド会議 代表)|tochigi gene
青柳 徹(あおやぎ とおる)
・ブランディングデザイナー
・地域連携教育プロジェクト oneclass 代表
・しもつかれブランド会議 代表
・宇都宮大学非常勤講師
青柳さんは、栃木市を拠点とするデザイナーであり、ブランディングとグラフィックデザインを用いて多様な課題解決をしていらっしゃいます。
クライアントワークとは別に、ご自身企画のプロジェクトである「しもつかれブランド会議」や「oneclass(ワンクラス)」などを展開中。
今回は、活動に関する「経緯」や「考え」「想い」などをおうかがいしていきます。
※今回はコロナショックを踏まえ、オンラインインタビューでお送りします。
目次
ブランディングデザイナーとして
>改めて、青柳さんのお仕事を教えてください。
肩書はブランディングデザイナーです。
ブランディングとグラフィックデザインで様々な種類の課題解決をしています。
>どのような課題を取り扱うのですか?
お客様は大きく分けて「企業」と「地域」です。様々なサイズ感の案件を対応しています。問題の原因は色々な所にあると考えているので、扱う案件のジャンルはあえて限定しないようしています。
>全体を取り仕切るイメージでしょうか?
その通りです。「もっといい結果が出せる!」って感じる案件でも、一部のジャンルだけで仕事をしていると、その他のジャンルを着手できなくなってしまう場合もあると思うんです。とはいえ、写真撮影やプログラミングなど私では対応できないジャンルもあるので、その場合は、その分野のできる方にお願いしています。
「実践値」を持っていない人の言葉は軽い。
>仕事をする上で、大切にしていることを教えてください。
クライアントワークとは別で、自分が企画するプロジェクトの「しもつかれブランド会議」と「oneclass(ワンクラス)」を展開しています。
「青柳さんはデザイナーだから、プロジェクトを回さなくていいのでは?」と言われることが多いのですが、私は実践者の言葉を大切にしているので「実践」しています。
よく「儲かってるんですか?」と聞かれますが、私が実践する目的は、仮説の検証であり、その環境をつくって行動することなんです。
クライアントワークだと、責めきれない時もあるので、自分のプロジェクトでチャレンジしまくる。フルスイングする。そこから生まれる意見は空論ではなく、経験を元に築いた「中身のある提案」にも繋がります。
もしかしたら、新しいことにチャレンジするのが好きなのかもしれません。もしくは、飽きっぽいのかも。(笑)飽きないために、新しい企画をしているのかもしれません。結果、自分が成長するだよなぁ。
>わかるー。私も若いころに音楽活動していたのですが、毎回ライブを「違う形」にする工夫をしていました。大変だけど、その方が自分もお客さんも楽しいという感覚でしたね。
それです。私もDJをしていたんですが、ほぼ一緒の感覚だったかもしれません。
そのライブでしか使わない曲も多かったですね。
>どこか、今の仕事にも繋がっていますよね。
現在、仕事を受ける基準みたいなものはありますか?
はい。自分が「ワクワクするか」ですね。ワクワクしない仕事は受けないようにしています。あとは「小さなチャレンジを応援したい」という思いがあります。
>以前お話しした際にも盛り上がりましが、その点も共通していますよね。弊社の理念の中に「挑戦者であれ、挑戦者を支援せよ」という言葉があります。
その思いは、地域での活動に繋がっているんですか?
ローカル(地域)は個性を否定しがち
はい。現在、色々な地域のブランディングをさせてもらっていますが、「またそこへ行きたい」と思うポイントは「観光」や「食」ではなく、私の場合は「人」なんです。
地域で「チャレンジしている人」は、どんどん実践しているし、学んでいる。そういう人の話って、とっても面白いんですよね。
私が地域活性の仕事をしていて感じたのは、行政や団体の方々が「他の地域」など「ヨコ軸」を見がちだということ。
それに対して私は、ヨコ軸は「どうでもいい」と思っています。他の地域のマネをしても、その地域と同じではないから「うまくいかない」と思うんです。
ヨコ軸よりタテ軸
それよりも「タテ軸」がかなり大切だと思っています。タテ軸とは「そこに暮らす人」であり、その人が「何に興味あるか」「何をやりたいか」「どうしたいのか」というエネルギー。
そのベクトルをタテに伸ばして、その先にある社会に繋がった時に、その地域や社会にとっての「価値」になるというイメージです。
だから「そこにいる、面白いものを持っている個性ある人」を応援したいです。「小さなチャレンジを応援する」そこにしかない個性が、ローカルの発展の鍵だと思っています。
>まったくもって共感です。「地域独自の環境や空間」などにも価値はありますが、私が地域を考え抜いて見えてきたのも「人」でした。この企画がまさにそれです。
一人だと「トゲ」だけど、沢山いると「剣山」になる。
あと、「やりたいんだけど、やり方が分からない。」「仲間がいなくて、一歩踏み出せない。」という人達をサポートしたいです。
極端に言えば「地域の変態」を伸ばしていき、増やしていく。一人だと一本のトゲだけど、沢山いると「いけ花の剣山」になるイメージです。
結局「人間は自分のやりたいことしか本気でやらない」と思っています。「やりたいからやる」「その中で失敗しまくる」そこで基礎ができるし、その先に見えるものがある。自分も失敗しまくりです。(汗)
自分はどちらかと言うと、0から1をつくるタイプの人間だと思います。
音楽からデザインへ
>いつからデザインを始められたのですか?
もともとは音楽をやっていました。マニアックだったし、当時はYouTubeも無かったので、音楽で生きていくとするとレーベルからCD出すくらいしかなかった。そこまで売れるような音楽ではなかったので収益には繋がっていませんでしたね。
20代後半に父が急遽他界してしまって、更に母がガンの闘病を始めたのもきっかけで就職を考えました。その際に趣味でやっていたグラフィックデザインを活かし、広告代理店に就職しました。
8年くらいデザイナーをしていました。ある時、量をこなす仕事の中で、自分の意識の低さに違和感を感じました。こなしているだけで、クライアントの成果を考えていなかったんです。
「これじゃだめだ」と。もっと成果を上げる為には、もっと上流から関わる必要があるんじゃないかと考えました。そこからブランディングを学びつつ、フリーランスとして活動し始めました。
『3.11』
>いつから地域での活動を始められたのですか?
3.11の復興支援ボランティアで、Google主催のプロジェクトに3年くらい関わりました。そこで、地元のために動いている人達がたくさんいて「あ、俺、栃木に何もしてねぇや…。」と感じたのがきっかけです。
当時は東京の仕事が多く、栃木の仕事はあまりしていませんでした。そこから栃木に目を向け始めて、地域活動をしている色々な団体に会いに行き、一緒に活動を始めました。
違和感と挑戦
まだ私も未熟だったこともありますが、参加していた地域活動の中で「新しいものを受け入れない」「変化を拒む」「視野の狭さ」「考えの固定概念」などに疑問を感じることが多かったんです。
自分は新参者だったし、ズケズケ言うタイプだったので、徐々にメンバーとも距離ができていきました。下手くそでしたね。
だったら自分で立ち上げて「フルスイングできる環境を作っていこう」と思い、動き出しました。ワガママなのかもしれないですけど。
無駄なことに時間や労力を使うよりは「自分のやりたいこと」や「同じようにやりたい人」と先に進んだ方がいい。そういう意味で「誰とやるか」がすごい重要だと思います。
>合理的ですよね。その中でしっかりと大切なことも分析していらっしゃる。
ブランディングのポイント
>ブランディングをする際のポイントはなんですか?
クオリティより希少性
そこにしかない「強み」や「らしさ」をしっかり掘り下げて、展開していかないとブレると思います。
「その企業らしさ」「その地域らしさ」「その人らしさ」。希少性をちゃんと見いだす。私はクオリティより希少性だと思っています。
その中で「企業」や「地域」の軸にあるのは「人」。その人達の「過去・現在・未来」をしっかりを掘り下げて「これからどうしていきたいのか?」を描くサポートをしています。
ネガティブ
ネガティブだと感じている所をどうポジティブに切り替えるかが仕事だとも言えます。そのために深堀りします!
>価値の転換ですね!
ちなみに、ポジティブ部分にはどう対応しますか?
ポジティブはそのままでいいと思います。
>「掘り下げ」や「価値の転換」での要点はなんだと思いますか?
私が答えを出さないこと。
「その人たちが」議論して、やりたいことを決めて、実際にやる。自分達がやっているという実感が大切だし、結果に関しても「失敗する」くらいがちょうどいい経験になると思います。
そのためにも「私が評価しない」ようにしています。
なぜなら、私はいつか抜ける人間だから。その人たちが続けていけるようにサポートするように意識しています。実践を繰り替して、自分達でやったという達成感を味わう事が大切です。
>第三者が関わる事の本質ですね。
デザインに落とし込む
私はファシリテートをして、そこから出た「答え」に対して、デザインに落とし込みます。なんとなくあったイメージがビジュアル化することで、具体化していきます。デザインが機能してベクトルが集中すると、結果に繋がりやすいと思います。
>自分が「答え」を出さないって、モヤモヤしないですか?(笑)
ありますよ!言った方が楽ですもん。(笑)
でも、それよりも大切なものがあると思います。
>ですよね。私がコンサルする際はモヤモヤします。(笑)
あとは、メンバーが最初はモジモジしていたのに、積極的に発言するようになっていく過程は、とても面白いですよね。最初にも話しましたが、ヨコを見るよりは、自分達を掘り下げた中で出てくる「小さなチャレンジ」を私は「メイイッパイ」応援したい。
違うなって思ったらすぐ切り替える。それの連続しかないかなぁと。時間がかかっても、メンバーの意識や行動が変わる方が、長期的には「価値がある」と私は思います。
>おっしゃるとおりですね。
取り組みの中で感じる「やりがい」は何ですか?
デザインやブランディングで、いい流れを設計できた時は気持ちいいですよ!
あとは、やっぱり「人が成長していく過程」は面白いなぁ。
リアルとデジタルの融合
>これからの展望を教えてください。
コロナの状況もあるので、企業に対してDX(デジタルトランスフォーメーション)支援を考えていきたいと思っています。
例えば、テイクアウトに対するデジタルツールの思考だったり、オンライン会議だったり。
>習慣や固定概念の書き換えですね。
はい。リアルの制限が強まっている今、これからはデジタルを前提とした体験設計をしたいです。世界的にデジタルにシフトしていると感じています。
リアルの情報量には敵わないけど、それを超越する利便性や回数が実現できれば、成果が高まることもある。逆に今後の「リアルなコミュニケーション」は、オフな会話だけをする「飲み会」とかでいいと思っています!
リアルとデジタルの選択の幅を見い出して、新しいビジネスやコミュニケーションを設計していければと思っています。
>まさに、これからみんなが向き合う所ですよね!
本日はありがとうございました!
インタビューを終えて
「人」と向き合い、本質を考えながら問題解決にアプローチしている青柳さん。
尊重を軸とした取り仕切りから、時には失敗も含めた「体験」を提供するその「リード哲学」には希少性を感じました。個人的には共感することが多かったです。
法人や地域で、これからチャレンジしたいと思っている方々にとって、貴重な存在であることは間違いありません。
青柳さんみたいな方の力を借りながら、「ひとりひとり」が「自分の価値の転換点」を見いだし、自分の「好き」や「興味」を縦に伸ばしていける。
そんな個々の世界を増やしていくことが「組織、栃木、ローカル」などのコミュニティ活性に繋がるのではないでしょうか?
皆さんは何を感じましたか?
※今後、青柳さんの取り組みを紹介していくコンテンツを企画しています。
「個人」及び「ビジネス関係者」にとって、参考になりそうな「解釈」や「切り口」を紹介していければ幸いです。お楽しみに!
関連情報
◆しもつかれブランド会議
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この記事を書いた人
石川智章
「栃木のしゅし」総合統括
県南エリア出身
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