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「学生秘書」|ネガポジ転換論
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「学生秘書」|ネガポジ転換論

ネガポジ転換論

発想

「学生秘書」は、なぜ生まれたのか

 

2019年7月、思いつきで「学生秘書」というプロジェクトを始めました。

 

これは僕が若者に様々な機会を提供するために、今すぐ実行可能で、自分にも負荷が少ないプログラムとして考えついたものです。

 

簡単に説明すると、青栁が関わる様々なプロジェクトに学生が秘書として同行し、プロジェクトのメイキングに参加する事で、学びと体験を得てもらうというもの。

 

学校や地域や大人の「学生はこうあるべき」という世の中の「当たり前」に疑問を抱く学生に対してのソリューションとして思いついた企画です。

 

僕みたいな大人の「秘書」として社会に連れ出すことにより、今までの常識外の世界を体感してもらい、自分のポジション、やりたい事を見いだしてもらえたらと考えスタートさせました。

 

若者を育てたいけど時間がない。だから「ながら時間」を活用。

 

局所的なアドバイスをすることは簡単です。

 

「アドバイスで終わって良いのか」「僕ならではの機会を提供することはできないか」と考えました。とはいえ、僕も自分がやるべきことが沢山ありますので、できるだけ時間的制約が少ない状態が理想です。

 

そこで思いついたのが、僕の活動に「秘書」として同行させてしまうことでした。元々僕の予定として入っていたもに付いて来てもらえば、別の時間を用意する必要もありません。

 

つまり、僕の「ながら時間」を学生の「学びの時間」にしちゃっています。
・運転しながら
・プロジェクトに参加しながら
・アイデアを考えながら
ブランディングを考えながら学生と行動する時間を学びに転換することで、知見の共有と実践の時間にできます。


今までは僕がひとりで運転して現地へ向かっていた時間を、助手席に乗せた学生とディスカッションの時間にしたり、プロジェクトに参加してもらってインプットや実践の時間にしてもらったり、アイデアやブランディング発想の時間を共有したりと、全て「ながら」で完結します。

 

対価は「体験・知識・繋がり」

 

学生と青栁、互いにどんな「メリット」があるかの整理したいと思います。

 

学生メリット
1. 青栁のブランディングデザイン論を学べる
2. リアルローカルの現状を体感し、課題解決策を思考できる
3. 青栁と時間を共有することからの広義な学び
4. ローカルの様々なプロジェクトに参加可
5. 繋がりが多方で広がる
6. 青栁を壁打ち相手に、自分のアイデアをブラッシュアップ
7. 移動は青栁にお任せだからほぼ移動費なし
8. ご飯はたまに青柳が奢る。たまにね(笑)
9. プロジェクトリストの中からの選択制
10. 学業優先が大前提で、参加タイミングはお任せ
11. 参加強制圧力なし。自分のペースで、時間のある時に参加でOK

 

青栁メリット
1. 地方で活躍する若者を育成できる
2. アイデア・企画などを一緒に発想してくれる相手に
3. プロジェクトが青栁の広告となる

 

大人がチャンスと機会を提供

 

地方と東京の大きな差のひとつは、クリエイティブの質の高さです。地方に比べ、東京は競合がとても多く、新しい物の生まれるスピードも早い。そんな中で生まれるクリエイティブは、質が高いものしか生き残れません。しかし地方は東京ほど新しいものは生まれません。

 

では東京のように新しいものが生まれるスピードが早くなれば良いのか。確かにスピードは大切ですが、スピードよりも「一つ一つしっかりと育てること」が、地方の感覚には合っていると思います。その地域のものとして「ブランド」を確立し、長期で選ばれるものを作る視点が大切です。

 

人を育てることも同じです。地方に興味を持つ若者が増えたと言われていますが、地方から出る若者の方が圧倒的に多いんです。確かに一度外で学びを得てから戻るという方法もありますが、皆が戻るとも限らないですよね。大人が様々なチャンスと接点を提供することで、学ぶ方法はいくらでもあるはずです。

 

ローカルでの活動も、捉えかた次第でいくらでもポジティブに転換できます。
「新しさ」から「豊かさ」へ。
今あるものを捉え直すことで見える世界を学生と一緒に考えています。

 

実践例

 

今回の実践例として、学生秘書として約2年間活動してくれた「境野 典」さんを紹介します。

大学3年生の時に学生秘書に参画し、僕と一緒に栃木県内を初め、県外にも同行し知見を広めてくれました。境野君へのインタビューを通して、学生秘書とは何かをお伝えできればと思います。

 

大学生の立場としてできることもあるんだな

 

青栁(以下青):学生秘書に誘ったとき、どうして参加してくれたのかな?

 

 

境野(以下境):確か最初ファミレスでこの話をうかがったんですが、かなりドキドキしてました…どんな話をされるのかと(笑)。疑っていたわけではないですけど(笑)。

 

学生がプロの仕事に無料で同行させてもらえて、尚且つ自分で考える機会になる!青柳さんと長時間一緒にいられるので、青柳さんの考えも聞くことができるなど、お話をうかがって「プラスの面しかなかないな。」と思いました。

 

お金の面でもかなり優遇してもらえて、交通費もかからないようにと青栁さんの運転する車で一緒に移動させていただきました。移動の時間に色々と話すことができて深い学びになりました。本当に有り難すぎる企画だったと思います。

 

 

:初めて会ったのは、僕が代表を務める「しもつかれブランド会議」のミーティングの時だよね!たった一人で現れて、普通は大人でも、誰かと一緒じゃないと知らないところに一人で行くのってハードル高いけど、「大学生で一人で来る」って、面白い人だと興味を持ったんだよね。

 


:実は、あれが学校外での初めての活動でした。あの時は「何かやりたい」とモヤモヤしていたんですが、何ができるか分からなくて。とにかく「外に出て人の話を聞きたいな」と思っていたタイミングだったので、目の前のチャンスを掴みに行くような感じでした。

 


青:僕が関わっているプロジェクトに急に参加させられたりして、それって大学とはまた違った体験だと思うんだよね。加入して一緒に動くようになり、今まで出会ったことのないような「変な大人たち」との交流が始まったわけだけど…どうだったかな?

 


:プロジェクトに参加しても最初は何もできないと思ってたんですけど、想像以上に大学生を「貴重な存在」として扱ってくれたり、自分の意見を求められる場面もあったりと「大学生の立場としてできることもあるんだな」と思いました。

 


:年上の人ばかりの中に入ると、意見しにくい場面もあるかと思うんだけど、柔軟性のある「自分なりの視点」を入れて話すところが素晴らしい。僕は境野君のそんなところが「面白い」と思ったんだよね。

 

写真も一生懸命やっていて、写真のレベルも素晴らしいんだけど、従来のカメラマンとは違った視点を持つカメラマンになる可能性があると感じているよ。

 

カメラマンはやっぱり写真のクオリティありきだとは思うけど、これからはクオリティ以外にも様々な要素が必要になってくると思っていて、そこに「自分ならではの視点がちゃんとあるか」が問われてくるはず。

 

境野君が撮影した写真

リアルを体感

 

:青栁さんと活動する時は、自分なりに考えてノートやスマホにメモしていて、整理することが習慣づいてます。

 

 

:いつも帰りの車の中で話している時にメモを取ってくれたり、僕の考え方や言葉についてたくさん質問してくれたよね。質問の内容自体も面白い視点だったし、この活動が境野君の「思考を拡張するような体験」になっていればすごく良いなと思う。

 

 

:青栁さんを通して知らない情報を吸収できるのはありがたいです。その考えを元にして人と会った時や他のプロジェクトでも、「あのとき青栁さんが言ってたのはこれか!」と理解できる瞬間があったりします。

 

 

:大学の普段の学びとはまた違った実践というか、「生」のプロジェクトだからリアル感はあったんじゃないかな。

 

 

:大学のゼミでコワーキングスペースについて考える機会があったんですけど、青栁さんと行動を共にしたことで、直ぐに実際のイメージが湧き発表にも活かせたと思います。

 

ネットで知った情報と、リアルを体感した情報は全く別物で、「本当に必要なこと」なのか、自分の目で見てみないと分からないことがたくさんありますよね。

 

 

:情報の解像度は全く違うよね。

 

 

:ネットの情報には成功事例が多いんですよね。自分を良く見せたいからですかね。

 

大学で学ぶのも大切ですけど、ちゃんと自分の目で見ながら町歩きしたり、住民の話を聴いておかないと、自分の思い込みだけになってしまいます。

 

境野君が撮影した写真

住む地域の事を考えてみる

 

:栃木県外の活動も同行してもらって、ローカルのリアルな現状とかを体感したと思うんだけど、地元の佐野でも活動を広げてるのをみると、自分の活動にも影響があったのかな??

 

 

:青栁さんと知り合って学生秘書を始めたことで、たくさんの大人の方々と繋がれました。まさにスタート地点だったと思います。

 

 

:学生秘書に参加する前と後では変化はあった?

 

 

:変わりましたね。青栁さんと一緒に行動するとプロセス全体が見えるので、改めて点で見るとシンプルに捉えられるんですよね。「大学生だからできない」とかではなく、情報として「知っておく」「見ておく」くらいでも良いのかなと。

 

 

:元々僕は住んでいるところに凄く興味があったわけでもないし、地元愛があるわけではないんだけど、東日本大震災の復興支援で被災された方々と関わる中で感じたのは、自分たちのアイデンティティとなる地元を凄く大事にされているなと。

 

みなさんと一緒に活動する中で、僕自身も「あ、俺そういえば地元のこととか考えたことなかったな」と考えるターニングポイントにもなって。東北に関わる中で得た知見を自分だけものにするんじゃなくて、自分が住む地域の活性のために少しでも役立てればなと思ったんだよね。

 

そこから栃木で少しずつ活動するようになったのが始まり。他の地域を知ることによって自分自身を振り返るきっかけになったんだよね。

 

 

:僕も佐野に住んでいますが生まれは群馬だったので、そこまで地元に愛着もなく育ちました。でも、学生秘書で県外を回ったことで、「やっぱり地元で自分の力を活かしてみたい。」と思うようになったんです。

 

すぐには難しいかもしれませんが、将来的には写真や映像を通して、佐野に限らず地方で頑張っている人たちの力になりたいと思っています。


:地方で活動しようとする同級生は少ない?


:多くはないですね。むしろ少数です。こういった活動でもインターン的なものはありますけど、個人同士で繋がって活動する人は中々いないんじゃないですかね。友達からも「凄いね」「何してるの」と言われる時はあります(笑)。

 

:東京に対しての憧れはないの?

:「無い」と言ったら嘘になりますけど、憧れだけじゃないんですよね。やっぱり東京に限らず他の町も知っておいた方が良いと思いますし、実際に行ってみないと分からない。栃木は気軽に東京へと行ける距離なので恵まれてますよね。

 

:東京に出たとしても、将来的には栃木に戻り何かやりたいとか考えてる?

 

 

:そうですね。ただ「超栃木大好き!」というわけでもないですし(笑)、まだそこまで思い入れが芽生えていない状態かもしれません。今のところは場所は限定していませんね。

 

特にローカルに対してネガティブな感情はないです。一度は東京や他の地域を経験しておきたいというのはあります。僕は体験してから腹落ちするタイプなので勉強もしておきたいです。

 

捉え方

 

:学生秘書は、学生だからこそ大人の懐に入りやすいという部分を上手く悪用しながら進めていて(笑)。僕は次世代のプレイヤーを増やすための種まきをする「投資」感覚でやっているんだよね。

 

 

:いろいろな人と会わせていただきました。青栁さんに名刺もデザインしてもらって、多くの人に自分を知ってもらうことができました。働き方や考え方を直に聞けたことが、学生秘書に参加して凄く良かった点です。

 

青栁さんの働き方や、コミュニケーションの取り方を間近に見られたのも良かったです。話を聞くだけでは分からないかもしれないけど、青栁さんに同行すると「同じ立ち位置」になれるので、自然と青栁さんモードでコミュニケーションを取れたことが学びになっていると思います。比較して自分の良いところ悪いところも気付けました。

 

 

:一緒に巡って僕も学びが多かったんだよね。

 

考え方に年齢は関係ないと思った。若いから不足しているんじゃなくて、経験値的には足らないかもしれないけど、経験はスキルだから時間をかければ身につくもの!それよりも境野君が素晴らしいのは「物事の捉え方」なんだよね。その考え方って、なろうとしても中々変えられないんだよね。

 


物事の捉え方とか視点とか切り口とかを変えるだけで、その価値が今までと全く違って見えるんだよね。大事なのは「物事を多角的に見ること」で、一方からしか見れなくなってしまう場合が多いのだけれど、境野君は柔軟に人の話も受け入れるしね。

 

常に本質を問う

 

:最後に学生秘書を体験した感想を。

 

 

:一緒に活動していて、今までの自分の知識が試される部分が多々ありましたが、まだまだ足らないなと痛感させられた気がします。また、青栁さんのベースになっている考え方は、どんなことにも通じる価値観だと感じました。

 

 

:いつの時代でも本質って変わらないと思っていて、やっぱり本質から考えないとね。

 

儲かる儲からないかから発想すると、人や地球を不幸にしてでも自分たちさえ儲かれば良いという発想になる可能性もあって。地球に良くないサービスって本質的には誰も幸せになれないものだよね。

 

地球がダメになったら生息する生物全てがいずれは不幸になるわけだから。今さえ良ければというのは刹那的な発想だよね。そうじゃなくて人間として、この地球の一部として考えたときに「それは本当に必要なサービスか」という観点から考え、常に本質を自分に問うプロセスが大切なんだよね。

 

 

:結果自分たちに全て跳ね返ってくるんですよね。

 

 

:自分たちに返ってこなかったとしても、子供や孫世代にしわ寄せが出ることもある。そんな世界で良いのかを問い続けないとね。

 

例えば僕らの世代で、「しもつかれ」のような「栃木らしさ」を失うようなことがあれば、損失を生み出した世代になってしまう。

 

 

:どこに行っても同じような物ばかりの世界になってしまいますよね。

 

 

:長期の時間軸で本質的に考えれば、「しもつかれ」には価値しかないことが理解できる。そして、自分で価値を見いだして、その見いだした価値を本気で信じることが必要で、それをやり続けることで「栃木らしさ」の価値が上がるんじゃないかなと。

 

 

:新しいものを生み出すばかりではなく、今あるものをどう捉え直すかですね。

 

 

:人間て無いものねだりしちゃうんだよね。今目の前にあるものに感謝し、どう付き合いながら一緒にアップデートしていくかが大切。

 

 

:いつか日本の魅力として「しもつかれ」が当たり前になると面白いですよね。

 

 

:学生秘書は卒業だけど、僕らの関係は切れるわけではないからね。これからも一緒に楽しいことをやっていこう。

 

 

:はい!これからもよろしくお願いします!

 

あとがき

 

境野君は、大学卒業後も「しもつかれブランド会議」での活動を続けてくれることになりました。

 

僕が学生秘書で提供したいのは「環境」です。

 

学生が自分自身を見つめ直すきっかけとなり、今まで接点のなかった世界との繋がりが生まれ、世の中の当たり前を「本質から捉え直す考え方」に浸れる環境です。その環境を提供することが、僕ならではの「投資」と考えています。

 

さて、今年度からは高校3年生との学生秘書ライフです。彼もめちゃくちゃ面白いです。彼の成長の一端を担えることを嬉しく思います。

 

本質はいつの時代でも変わりません。僕は学生たちに「常に本質から見つめることの大切さ」と「普遍さ」を伝えるために、学生秘書プロジェクトを続けたいと思います。

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この記事を書いた人

青柳徹

「ネガポジ転換論」担当

県南エリア出身

栃木市を拠点とするデザイナー。ブランディングとグラフィックデザインを用いて多様な課題解決プロジェクトを展開中。
「ローカルの小さなチャレンジを応援しまくり、そこにしかない独自の価値を生み出したい!」
栃木市を拠点とするデザイナー。ブランディングとグラフィックデザインを用いて多様な課題解決プロジェクトを展開中。
「ローカルの小さなチャレンジを応援しまくり、そこにしかない独自の価値を生み出したい!」

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