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「介護 3.0」②|ネガポジ転換論
「介護 3.0」②|ネガポジ転換論

「介護 3.0」②|ネガポジ転換論

ネガポジ転換論

発想

下野市

 

今回はネガポジ転換論「介護3.0」の後編です。

 

「介護3.0」が考える、「介護からの街づくりと、在宅ケアの可能性」について、「介護3.0」理論の提唱者であり、現在は「介護付有料老人ホーム 新」の施設長を務める横木 淳平さんと一緒にお伝えしていこうと思います。

 

介護を軸とした町づくり

 

青柳:最近よく、横木さんと「介護と町づくり」の話をしていますが、「介護」と「町づくり」がイコールになっていない人が多いと僕は感じています。

介護の課題は多々あると思いますが、これからの超高齢化時代において「介護を軸にした町づくり」の考えを聞かせてください。

 

 

横木:現在、町には多数の介護事業者があります。ひとりのお年寄りが、ヘルパー・デイサービス・ショートステイサービスを別の事業者から受けることになった場合、コンセプトが施設ごとに異なるので「介護に一貫性がない状況になってしまう」という課題があるんです。


介護に一貫性を出すためには、町レベルで「在宅で、その人らしく生きられる介護を目指します。」と宣言し、それに賛同する事業者を集めるのがが良いと思っています。

行政が宣言するだけでもだけでも変わります。向かう方向が提示されれば、事業者にとっても「提供すべきサービス」が明確になりますからね。

 

 

青柳:「町づくり宣言」をしている町もあるけど、具体的な中身が見えないところも多い。「町として目指す介護」が明言されていれば、アクションしやすくなるってことですね。

 

 

横木:10年20年後の具体的なビジョンが大事です。介護を生業にする人たちも、町でするべき介護について考えやすくなる。

 

 

青柳:まずはビジョンありきですよね。

 

ビジョンが大事

横木:町が一つの会社と仮定してみましょう。

 

年功序列のシステムで、ビジョンも曖昧だと、社員のモチベーションは上がらないですよね。

 

でも、より具体的に「あと10年で、支店を5店舗増やす!」など、アクションを掲げれば、社員は「そこの店長になれるかもしれない」という目標が生まれますよね。そうなるとモチベーションが全く違う。

 

「町づくり」も、より具体的な目標設定が重要で、町が推進する介護を具体的に明示すれば動きやすくなり、新しく参入する事業者も、やるべきこと、必要なことが明確になります。

 

横木さん

 

 

 

青柳:そこが無いから手段を先に考えてしまう。どこを目指すかが見えないから、一貫性のある動きにならないってことですね。

 

 

横木:行政が「その人が家で最後まで元気に過ごせるように」と宣言し、そこに投資し、そのやり方や手段を共有し、学び合うことが必要。だから「介護3.0」を学んでくださいという話になる。(笑)

 

 

青柳:そうですよね。(笑)

そのビジョンがあることで、町全体の「介護のブランディング」にもなりますよね。

 

「この町の介護スタイルはこれだから、それに沿った介護施設があるでは」と紐付けば、その介護を受けたい場合、その町を選択しやすくなる。

 

今後、住む町を選択する際に「介護」は重要なファクター。ブランドは「選択しやすくする」ことにもなるから、選ばれる確率が上がる。未来の生活が見えれば「若者の移住」にも繋がるなど、人の動きも生み出しやすいですね。

 

町が介護ビジョンを明示するのは難しいんでしょうか?

 

 

横木:まず「介護3.0」のような、これまでと異なる介護スタイルがある事実をほとんどの人は知らない。「選べる介護」があるとは思っていないんです。

 

 

青柳:行政も「選ばれる介護」を核にすることにより、結果「人が集まる」ということにリンクできていないんでしょうね。

 

そこを僕らが繋げると、より本質的な介護を受けられる人が増える=良い町になるのかなと。町としてもプラスしかないんじゃなかな。

 

高齢者への新たなアプローチ

 

横木:行政も若者が輝けるように移住促進などの活動はしている、町も若者流出に歯止めをかける活動をしている。それらと同じくらいに、今後更に増える高齢者たちが、輝いて生活できるような取り組みに力を入れた方が良いなと!

 

 

青柳:確かに現状の高齢者対策は若者に対するアプローチとは異なりますよね。高齢者対策として「新しいアプローチ」をするというよりは「保守的」に感じます。

 

 

横木:新しいことにチャレンジしようという感覚は、あまりないのかなと思います。

 

 

青柳:お年寄りの生活の満足度を上げることにフォーカスしていないのかも。

 

 

横木:これまでの介護が「町の介護のゴール」として当たり前になっているんでしょうね。

 

 

青柳:施設単体で完結していますよね。それを外に開いていこうとするが「新」だったりするわけで。もっと社会や地域に拡張し、新しい介護の理解度が高まると、町全体として包括的に介護が変わってくるのかなと。

 

 

横木:地域に馴染むことも大事なんですよ。

 

 

青柳:そうですね、現在は地域から隔離されているような気がしますね。

 

 

横木:施設側からしても、地域に馴染むきっかけ作りをする必要がある。その時に、お年寄りが主でなくてはいけない。溶け込まざる終えない環境づくりが大事です。

 

 

青柳:分断をグラデーションにし、介護施設なのかどうか分からないくらいが良いのかなと思います。

 

 

横木:極端な話をすると、歩道を高齢者や障がい者が歩きやすいように最適化し、車道側に壁を設置してしまうなど、高齢者・障がい者を中心とした道路設計にすると面白い!

 

 

 

 

横木さんとおばあちゃん

青柳:そういう町になったら「住みたい!」と思う人も多いと思う。実験的な場所をつくってみたいですね。

 

 

横木:閉鎖的なイメージを変えないと本質的な変化は起こらないのかなと思います。ボーダーラインを薄めるために、プロのノウハウを使うことでより安全安心な場所になる。

 

現在は介護者にならないための予防が多い。それも大切だけれども、麻痺になっても認知症になっても安心して生活できる町であることが重要で、「ウチの町なら認知症でも輝けます」「麻痺になっても自由に外出できるサービスがあります」というような、「介護者になっても安心して生きられる町」であることも重要。

 

 

青柳:町全体のシステムとして、「身体がどういう状態になっても生きやすい町」にすることですね。

 

 

横木:町としてビジョンを宣言するだけで、新しい変化が起こせる。行政に全てを求めるのではなく、宣言をしてもらえれば賛同する「人」や「企業」が集まりやすくなります。

 

 

青柳:そうですね。「共感する事業者さん、一緒に町づくりしましょう!」みたいな宣言をして、応募があった事業者から選定するみたいなのもありですよね。

 

 

横木:それくらいしないと町の色は出せないと思うんですよ。

魅力をつくる

 

青柳:観光や食の魅力も大切だけど、町の課題に対してしっかり向き合い、課題を解決するためのビジョンを掲げ、共感者を集めて実践すること自体が町の魅力になるし、未来を創ることに繋がる。

 

 

横木:僕が思う「栃木県が魅力度最下位」な理由は、「魅力を出したいと思う人が少ない」ということかなと。

 

栃木県や茨城県は魅力がないと思われても、実はさほど困っていない、自分の住む町に興味のある人が少ない。

 

まず、町の人たち自身が「自分の住んでいる場所を魅力的に思ってもらいたい」と思うことがスタートラインで、それがなければ他の地域の人が魅力を感じることはない。住む人の「マインド」が重要だと思います。

 

 

青柳:そうですね、ビジョンを掲げる人が少ないのかなと思います。

 

 

横木:より具体的なビジョンですよね。この町が魅力的になった時に「どういうメリットがあるのか」が見えなければ、今まで通りで良いわけで。先が見えれば行動に繋がりますよね!

 

 

青柳:ビジョンを掲げて、町全体で同じ方向を目指すのは重要ですね。

 

 

横木:超高齢化社会の未来は誰も逃げられないですから。

 

 

青柳:だったらそれを「チャンス」と捉えて、どう時代に合わせて町をフィットさせていくかを考えた方が良いですね。

 

 

横木:スキルの共有が大事だと思っていて、「繋がり=スキルの共有」なのかなと。

 

デザイナーであればこのスキル、介護士であればこのスキルのような。様々なスキルを共有して一つの良い町が完成する。そう考えると、介護はこれからの時代欠かせないはずです。

 

横木さん

在宅ケアは介護応援時代へ

 

横木:デイサービスなどは「介護代行サービス」だと思っていて、「家族が看れない代わりに介護施設がお世話をしている」のが現状です。

 

その人が亡くなるまで、その人らしく生きれて、家族も自分の親を介護することにやりがいを感じ、「家で看取れて良かったな」と思ってもらえるサービスなのか疑問です。

デイサービスを利用した時間が8時間と仮定して、残りの16時間は自宅で介護することになります。大事なのはこの16時間にフォーカスすることで、そう考えると「介護代行サービス」で本当に良いんだろうかと。

 

僕は「介護応援サービス」の方が適切だと思っていて、「私たちが代わりに介護しますよ」ではなく「あなたが介護するのを手伝いますよ」だなと!

 

 

青柳:そう捉えると、やり方も教えることも変わりますよね。

 

 

横木:「在宅介護代行時代」から「在宅介護応援時代」になります。

 

例えば、家族がいない間に介護するのではなく、家族に介護のコツを教えたり、悩みを聞きます。

「家族がどれだけのストレスを抱えているか」「本人がどれだけ可能性を失っているか」を聞いてから、客観的に判断し自宅での介護アドバイスをします。

 

僕の中に「在宅介護いつでも相談サービス」というアイデアがあるんです。月額のサブスクリプションサービスで「介護について相談し放題」というもの。あくまで「代行サービス」ではなく、家族が介護することを「応援するサービス」です。

 

サブスクリプションにしたのも理由があって、「使わないと損をする」「相談しないともったいない」というふうにしないと、悩みが発生した時に使わない可能性もある。だからこのサービス使ってもらうために、サブスクリプションにする必要があるなと。

 

いつでも相談し放題なら、例えばデイサービスを利用しない日に、本当に困ったことが起こった場合、この応援サービスに登録しておいたことで、ご家族は相談しやすくなるというメリットがあります。


それに既存のデイサービスやヘルパーも競合になりません。デイサービスやヘルパーも利用しながら、応援サービスを併用すると良いのかなと。

 

介護保険に加入していなかったり、加入するほど重度ではないけれど、「最近足に力が入らなくなってきた」「物忘れがひどくなってきたな」というレベルでも相談できるので、早めに対応することができる。

 

最も難しいところは「相談される側のスキルが問われる」ということ。画一的なサービスではないので。

 

 

青柳:そういう人材も育てないとですね。

 

 

横木:「代わりに介護しますよ」ではなく「あなたの介護を応援しますよ」という、「代行」から「応援」というふうに考え方を変えるだけで、やるべきことが変わります。

 

これが大事で、既存サービスが当たり前だと思うと、新しいサービスも生まれないんです。やりたいことがある人が、やりたいことを実現できる町でないと良い結果も生まれないでしょ。

 

町が既存の施設・デイサービスを許容し続けると、もし「全てのお年寄りがハッピーになれるかもしれないサービス」を思いついたとしても、そのサービスを実行しにくい世の中になってしまっている。町ぐるみで、やりたい人が実行できる環境づくりをおこなうことが重要なんです、そうでないと「チャレンジしたい!」とも思わなくなってしまいます。

 

 

青柳:枠の中でしか考えられないと、自分のやりたいことが何だったかすら忘れてしまうということですね。本当に解決したいことに注力できないと、町から新しいものが生まれなくなるし、活性化できない。

 

横木さん

中にいる人

 

横木:外から人を呼ぶより、中の人をいかに輝かせるかが重要。輝きが外に広がり、結果的に外から人が来るようになると思うんです。

 

 

青柳:僕は地域住民は「資源」だと思っています。住んでいる人がその地域に一番思い入れがあるはずだから、行動しようとしている人が「動きやすい環境」をつくることが重要。

 

短期間で考えると外から優秀な人を入れて、何らかの結果を出すことはできるけど、僕らがいなくなった未来になっても、新しい事が生まれ続ける町にすると考えたら、5年では難しいかもしれない。何十年かけてでも、僕らの時代でその仕組みを生み出し、その仕組みを使って次の若い世代が新しいことに「チャレンジしやすい環境」を構築しておくほうが町の財産として残る。

 

まず「100年後どういう町にしたいか」から逆算して、「じゃあ今やるべきことは何か」を考えないと、局所的なものしか生まれないし、町の特色も構築できないと思います。

 

 

横木:僕が考える良い町の定義はシンプルで「100人の住人がいたら100人に役割と居場所がある町」。町に住む一人ひとりに「居場所」があることが理想。

 

 

青柳:町の人たちのやりたいことが実現しやすいような「サポート体制」が構築できれば、ひとりで始めるのは不安だけど、周りにサポートしてくれる人たちが居て、一緒に伴走してもらえるのならば面白いことが生まれるはず。

 

 

横木:この町で「やる意味」「住む意味」を見つけられないから他の地域へと流出してしまうんです。意味づけさえできれば過疎地でもそこに住み続ける。

 

 

青柳:そいういう人たちに「意味づくり」ができるように、行政は僕らのような人間をうまく使った方が良いですよね!

 

町にその文化をつくり、それが根付いて、その地域に住めば新しいことが始めやすい。文化になれば人も集まるし、新しいことが生まれ続けるサイクルができる。

 

 

横木:その町で自分がやりたいことに近い成功事例があれば、チャレンジしようかなと思うし、「あの人成功しているなら、あの人の近くで始めれば成功できるな」とイメージできますよね。

 

 

青柳:モノ・コトづくりの前に「ヒトづくり」が重要で、ヒトづくりになるスキームを構築すべきってことですよね。

 

介護の未来をつくるチャレンジへ

 

青柳:これからの「介護3.0」はどのように成長していきますか?

 

 

横木:実は僕、フリー介護士になる予定で、「介護のスタンダードを変える」という活動をしていこうと思っています。

 

「介護付有料老人ホーム 新」で実践していた「介護3.0」でしたが、施設限定だとより多くの人は救えない。「その人らしく最後まで生きていける社会」をつくることができれば、僕らプロの介護士も胸を張って仕事ができる社会になる。

 

そのためには施設から飛び出し、「介護3.0」を普及する活動しなければと考え、来年度からチャレンジしていきます。

 

お年寄りがハッピーになる、働く介護士も胸を張れる「介護3.0」というソフトを引き下げ、コンサルやアドバイザーや現場研修、新人研修、講演会などをやっていきますので、ぜひ僕に仕事をください。(笑)

 

僕を応援してくださることが、あなたの親御さんや、また自分自身が本質的な介護を受けられる未来へと繋がりますので、よろしくお願いします。

 

 

青柳:一緒に「介護新時代」をつくりましょう!ありがとうございました!

 

ネガポジ 介護3.0 とちぎのしゅし

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この記事を書いた人

青柳徹

「ネガポジ転換論」担当

県南エリア出身

栃木市を拠点とするデザイナー。ブランディングとグラフィックデザインを用いて多様な課題解決プロジェクトを展開中。
「ローカルの小さなチャレンジを応援しまくり、そこにしかない独自の価値を生み出したい!」
栃木市を拠点とするデザイナー。ブランディングとグラフィックデザインを用いて多様な課題解決プロジェクトを展開中。
「ローカルの小さなチャレンジを応援しまくり、そこにしかない独自の価値を生み出したい!」

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