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2021-8-3

「地元に帰る」の価値を再定義。市場を構築して「かえれる地元」へと変換!|ネガポジ転換論



とちぎのしゅし ネガポジ転換 メイン画像 株式会社kaettara


自分の地元に帰るという行為にネガティブなイメージを持つ人もいるでしょう。

東京から地方に移動することを昔から「都落ち」とも呼び、何かに負けた結果として地方に戻るという「東京が最も価値のある場所」を前提にした価値観は、旧態依然としてあります。

しかし対極に、負けたからローカルに移るのではなく「やりたいことが地方にある」「地方にこそ新しい価値がある」「自分が生まれ育った地元に貢献したい」と考える人も増えています。でも実際に帰るためには「住むところはあるか」「仕事はあるか」「地元の人と良い関係性が築けるか」など、いくつものハードルを超えなければいけません。

「誰もがかえれる地元をつくりたい」そう考え「株式会社kaettara(カエッタラ)」を創業した代表取締役の永井 彩華さんは「地元に帰る」というネガティブを「かえれる地元をつくる」というビジョンのもとポジティブに変換する事業をされています。

今回はその価値観を転換する事業プランをうかがいました。

 

地元とどう関われるのか

青栁(以下青):kaettaraはどんな事業をしてますか?

とちぎのしゅし ネガポジ転換 株式会社kaettara 表取締役の永井彩華さん


永井(以下永):「かえれる地元をつくる」をビジョンとして掲げています。かえれる地元というのは、多様なチャレンジができる仕事が地元にある状態のことだと思っていて、その実現に向けた事業をしています。

具体的には「栃木ゆかりのみ」という場をつくり、栃木出身者が地元と関わるきっかけづくりをしています。

それから小山市では官民連携アドバイザーとして、企業と小山市をつなぎ、共にSDGsの推進に挑戦をするためのコーディネーションを行っています。「未来に向けた多様なチャレンジの場」が地元には必要です。SDGs推進の世界観の元、企業を巻き込んだ新しい挑戦や雇用を地方でつくることを目指しています。


これからの企業にとって、環境や地域社会を意識しながら経済活動をするSDGsの視点は必須ですが、課題を持つ地域の現場を把握することが難しい状況です。地域で事業を始めるきっかけづくりとして「間に立つ人」が必要で、それを私たちがやっています。

:なるほど。

 

:2020年12月から「小山市はこんな地域で、こんなことを目指しているエリアなんですよ!」という情報発信を始めています。そうしたら「小山市と連携したい」という企業が20社以上集まったんです。

企業の強みを活かしながら、小山市の課題を解決する事業を考えることを今年度以降やっていきます。

:企業PRにもなるよね。


:そうですね。地域住民・行政・地元企業・学校などとの連携も考えています。こうしたチャレンジが「若者の仕事」になっていき「かえれる地元」に繋がるというイメージですね。

 

接点づくり


:そう繋がるわけね。その接点づくりの一つが「栃木ゆかりのみ」だったと思うんだけど、栃木ゆかりのみを経て、現在の事業にどう転換していったのかな?


:「栃木ゆかりのみ」は6年前から始めて、コロナ禍で1年前からオンライン化しました。

私自身が地元のことを知りたい、地元と何か接点を持ちたいという想いがあり、栃木県出身者が地元トークをする「飲み会」として、地元に想いを持っている人たちを集めて開催したのがスタートです。

とちぎのしゅし ネガポジ転換 栃木ゆかりのみ 都内で開催


そういった場を提供していると、栃木の情報がたくさん入ってくるんですよね。都内で開催しても栃木県に住んでいる方も参加してくれて、地元のことをたくさん教えてくれました。

そこで得た情報をもとに、地元に足を運ぶ機会が増えたという参加者たちの声も聞いています。

— 対話 —

でも、私は単純に「地元のことを知らないからマッチングしない」と思っていました。そして、今の環境のままマッチングさせるのは難しいんじゃないかとも思うようになったんです。

地元にはもっと「新しいチャレンジ」が必要だし、それを仕事にできる人が必要。そうじゃないと地元を出た人は帰りたくても帰れないんだなと。

どうしたら地元に新しい産業をつくることができるのかをずっと考えていて、現在小山市でやっているような、企業を地元につなぐ「官民連携を推進する」という手段にたどり着きました。


:まずは知ることだよね。知ることから始めないと、自分の地元を気にも留めない。そいう接点をつくれる人は必要だよね。



:県外に出てしまった人は県内のことを知らないから「何もない」「仕事がない」と言ってしまいますが、それはお互い様。栃木ゆかりのみを通して地元の方々へ「地元に帰りたい」「地元に貢献したい」という人がいる話をしても、「接したことのない人」のことは理解できないんですよね。

目の前にいない人のことは伝わらないと感じたので、やっぱり「間に立つ人」が必要なんだと思いました。


:翻訳する人は必要だよね。両方について語れる人。


— 天秤 —

:前提が全く異なっているから、対話が必要なんですよね。

:そうなんだよね(笑)。思い込みが前提を生み出しているから、変わるキッカケでもないとアップデートされるタイミングもないんだよね。


:「何かやりたいです」「自分こんなことできます」みたいな入り口よりも、「18歳まで〇〇に住んでいました。もっと地元のこと知りたいです、教えてください。」と、元々の関係性を語るほうが人として地域に入って行きやすですよね。そういう入り口も用意しています。


:そもそも、地元にフォーカスした理由は?


:私自身が地元での就職を考えず上京した原体験があります。

地方出身者は「家族の近くで仕事を見つける」か「好きな仕事をするか」を天秤にかけて、どちらかを諦めなくちゃいけないのかなと。「それって嫌だな!」っと思ったんですよね。「そんな世の中でいいのか?いや、おかしいな!」って。

:地元を再認識してもらうキッカケをつくると同時に、地元にも仕事をつくることができないかと。



「手触り感のある仕事」を求める時代


:エンジニアを地域に入れるサポートをしていていると、みなさん「地元に貢献したい」「地方を良くしていきたい」と口にしますが、一方で彼らは、東京でプログラムを書いていて「この仕事が世の中で、どう役に立っているのかが見えない。」とも話します。

とちぎのしゅし ネガポジ転換 kaettara


仕事にもっと手触り感を求めているし、ユーザーの反応を直に感じたいと思う人も増えてきてる。大企業で「大きな仕事」に価値を感じる時代から、「手触り感のある仕事」を求める時代になってきている気がします。

もう一つは、地域に課題があるのは知っていて、貢献したいと思っていても実践する機会がないし、挑戦する土俵に立つことも難しい状況にあります。

少し前では、東京でゴリゴリ働くことがカッコイイというイメージがありましたが、今は好きな場所で自分が社会に貢献できていることを実感したいという人が増えているように感じます。


:大きな歯車の一部だと、自分の仕事がどう役に立っていのか見えにくいんだよね。特にエンジニアは直接クライアントと対峙することが少ないから、相手の顔も見えない分フィードバックにも温度感がない。

例えばデザインという仕事は、ビジュアルをつくることが目的ではなく、そのビジュアルがちゃんと機能して課題を解決できたかが目的のはずなんだよね。

でも相手が見えないとビジュアルを納品して仕事完了になってしまう。だから僕の場合あまり間に代理店などを入れずに、直接やり取りするようにしてます。

顔と顔を合わせることで仕事の熱量も変わるし、情報の解像度も違うから、アウトプットのクオリティも高くなるんだよね。


:「世の中これだけ課題がある課題があると叫ばれているのに、自分は貢献しなくてもいいのだろうか?」と考える人が増えましたよね。


:「どうせ貢献するなら地元で」という人たちは増えているよね。


:そう思いますね。

 

課題よりどんな未来を目指すか


:色々と活動してきて、活動当初と今の変化って感じる?

:ほとんどの方が「どんな課題があるか」で地域に入っていきますが、大事なのは「課題」じゃなくて「可能性」だなと思うんです。「何が地域で活用できるか」に目を向けて、それをフックにどう課題が解決できるかを考えること。

それに、意外とみんな困っていないな〜と。

車があれば移動できるし、インフラも整っているので、「課題解決」じゃなくて「こんな未来が作れたらいいよね」という切り口で仕事をつくりたいと考えています。

 

とちぎのしゅし ネガポジ転換 kaettara


:課題を追いかけてると、結局目の前のことばかりになってしまって、理想の姿を描けなくなってしまう。「理想像と現状の差分」が本来やるべきことになるから、理想に近づくことで成長を感じるし、楽しいだろうし、自分がやる意味になるのかなと。

:私たちにとっての「かえれる地元をつくる」っていうのはこういうことだ!と言えるようになったときに、仲間が増えました。

前述の小山市の話も私一人でできることではなくて、できる人たちが段々と集まってくれたんですよね。kaettaraとして「これが地元には必要だ」と自信を持って言えることができるようになったのが大きいですね。


:仲間が増えると動いてくれる人も多くなるから、より目指す未来へのアクションは増えるよね。



持続可能には「わがまま」が大切


:これからは「我慢」じゃなくて「わがまま」の時代だと思っています。最近「わがまま会議」というのをはじめて、日々の生活で諦めていることや、我慢していることを言語化してみようという場づくりをしています。

その中で、あるお母さんが語ってくれた「我慢」が「子どもの送迎」でした。イヤだとも思っていないし、当たり前のように学校や駅への送り迎えをしているけれど、もしその時間がなくなったら1日1.5時間くらい「ゆとり」が出て、就ける仕事の選択肢が広がったり、他にも好きなことに時間を使ったりできるんじゃないかと。今のままで生活は成り立っているけれど「こうなったらもっと良いな」という声が浮かび上がってきたんです。

子どもの頃から「お母さんが頑張りすぎている様子」を見ていると、お母さんって大変だなと感じて、お母さんになるハードルが上がってしまう気がしています。今のお母さんが我慢をしないことが、持続可能な地域に繋がるんですよ!と話しをしました。

とちぎのしゅし ネガポジ転換 kaettara わがまま会議の様子


そこで挙がったファクトこそが地域で解決すべき課題ですし、挑戦を生み、ゆくゆくは新しい産業となり得る宝なんです。
企業にとって地域のリアルな声を拾うのは難しいので、そこを地域外の人が入って一緒に課題解決を目指すための入り口にしようと考えています。これまで「我慢が美徳」だった時代から、地域や後世のために「わがまま」を言いましょうと提唱しています。


:面白い!確かに不満はビジネスの種だもんね。それを解決するのが企業活動だしね。それを今解決できれば、次世代の新しい生き方になるし、町の財産になるよね。


:チャレンジのキッカケになりますよね。

 

海外挑戦のハードルを低く


:先日、僕が代表を務める「しもつかれブランド会議」と「栃木ゆかりのみ」とのコラボ企画で、海外在住で栃木にゆかりのある方に「しもつかれビスコッティ」を食べてもらうオンラインイベントを実施させていただきました。栃木ゆかりのみを海外にまで展開しているけど、海外への可能性をどう感じているのかな?


:コラボイベントを通して、海外に住みながらも「地元」というキーワードでこんなに繋がれて協力してもらえるんだなと体感しました。この座組で、地元企業の海外挑戦を支援できればと考えていて、海外挑戦へのハードルが低くなるようなサポートをする体制を作っていこうとしています。

また、学校と連携することにより、キャリア教育にもつながると思っていて、「栃木県に生まれながら、なぜ海外で仕事することを選んだのか」など、お話ししていただいて、多様な選択肢があることを地元の子どもたちに知ってもらうキッカケを作れたらと思います。

 

とちぎのしゅし ネガポジ転換 kaettara しもつかれブランド会議の様子


:海外への挑戦なんてできないと思っている企業さんが多いから、kaettaraさんで「道」を一本つくれば、「自分も乗っかりたい」という企業が出てくると思うよ。

その一歩目として「しもつかれブランド会議」が一緒にチャレンジできることを嬉しく思ってます。国ごとに受け入れられ方が違うだろうから、どう受け入れてもらえるかを戦略立てて一緒に考えてもらえるのは非常に楽しみ。


:私たちの地元郷土料理ということで良い事例になると思っていて、「しもつかれ」で良い実績をつくれたと考えています。そこから世界にチャレンジする地元企業を増やせれば、若い人たちも栃木から世界にチャレンジするイメージが湧くと思うんです。そこが「かえれる地元」につながれば良いなと。


:確かにそれも帰るキッカケになる可能性が十分にあるもんね。


:県外へ出ることは悪じゃないので。若者に多様な選択肢を与える・見せるの文脈でつないでいきたいです。そして、戻りたくなったらいつでも戻れるようにしたいなと。

栃木から日本のプラットフォームへ


:今後の展開を教えてください。


:「かえれる地元」は栃木県だけの話じゃないので、「ゆかりのみ」の全国展開を始めています。市町村単位のゆかりのみを、2025年までに日本の全市町村やりたいなと思っています!1700くらいあるので、今から毎日やってもギリギリなんですけど(笑)。


:早くやらなくちゃ(笑)。


:まず、その地域のことを知ってから、どう地域に貢献できるかを考えることが重要なので、ゆかりのみの座組を活かして全国に広げて「かえれる地元」をつくっていきたいなと思います。


:「栃木版」から「日本全国版」へだね。海外ともつながってるしね。良いプラットフォームになりそう。


:地元に帰りたかったら「かえれる日本」にしたいです。


:「飲み会」からスタートして、ここまで発展するのは素晴らしいね。最初からここまで考えていたわけじゃないよね?

 

とちぎのしゅし ネガポジ転換 kaettara ゆかりのみの様子


:考えてないですね(笑)。どうやって仕事にしようかとは、ずっと考えていました(笑)。

:悩みながら、自分で可能性を見出していったのが凄く面白いなと思って。これまでのスキームではなく、「かえれる地元を絶対につくる」というのを目指してやり切ってきたからこそ、今見えて来たのかなと。


:「その時できることを頑張る!」ですね。毎日改善です。


:今後も楽しみにしています。ありがとうございました!

 

あとがき


「儲かる」から始めたのではなく、「かえれる地元をつくる」ドリブンで始めた「栃木ゆかりのみ」。初めからビジネスとして考えていたら、ここまでの発展はなかったかもしれない。「儲かる」「儲からない」の外側で考えることで、これまでにない活動が生み出せる。けれど、そこに市場はない。


永井さんは「かえれる地元をつくる」という自分だけの軸をつくった。地元に帰る行為を「ネガポジ転換」するために、帰るという価値を再定義している。そのためには、ローカルで働く・住む・生きる、という価値も再定義し市場構築もしている。

僕は東京とかローカルとか、正直どうでもいいと思っている。
その人が自分の人生において最適な方を選べば良いだけ。

その中でローカルを選択しようとした人が気持ち良く選択できるように、永井さんのサービスはとても意義があると感じました。




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青柳徹

この記事を書いた人

青柳 徹

「ネガポジ転換論」担当
県南エリア出身
栃木市を拠点とするデザイナー。ブランディングとグラフィックデザインを用いて多様な課題解決プロジェクトを展開中。
「ローカルの小さなチャレンジを応援しまくり、そこにしかない独自の価値を生み出したい!」

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