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2020-7-25

oneclass(ワンクラス)①|栃木市|ネガポジ転換論



ネガポジ転換論・ローカルブランディング とちぎのしゅし 栃木県

栃木県を軸に、様々な課題解決に取り組んでいるブランディングデザイナーの「青柳さん」と「とちぎのしゅし」でお送りするネガポジ転換論

地方の共同体(ローカルコミュニティ)が抱える課題はたくさん!そして内容も様々!では、その課題をどう解決していけばいいのか?ネガティブをどうポジティブに転換していけばいいのか?

そんな疑問に対して、青柳 さんの活動を元に「視点、手法、事例」をご紹介して参ります。 この連載と通じて、それぞれの地域頑張るプレイヤーの皆さんにとって何らかのプラスになれば幸いです!

今回は、青柳さんの出身校である栃木市立国府南小学校で展開しているプログラム「oneclass(ワンクラス)」について。一部、二部に分けてお届けいたします!

はじめに

 

栃木市にある国府南小学校(こうみなみしょうがっこう)は、2020年7月現在、児童数が38名と栃木市で最も小規模な学校です。

 

僕は小規模校解消のために、2018年度より「oneclass(ワンクラス)」という地域連携クリエイティブ教育プログラムをスタートさせました。実はこの小学校は僕の母校だったりします。

 

今回は、僕がなぜここで授業をすることになったのか、そしてどんな課題を解決したいのかをご紹介しながら、地域ブランディングについての実践例をお話しします。

 

悪いのは誰だ

児童数が少な過ぎて、近隣校との統廃合の話があることは噂では聞いていました。

国府南小学校では「オープンスクール」として、公開授業の日を年2回実施しています。2017年の秋、僕は学校存続のためにチカラになれたらと考え、オープンスクールを見学に訪れました。

 

当時の校長に、僕がブランディングやグラフィックデザインの仕事をしていることを話し、チカラになりたいと伝えました。

 

偶然その日学校で、お子さんをこの学校に通わせている僕の一つ上の先輩にお会いし、なぜ僕がここに来たのかを説明して別れました。

 

数ヶ月後、その先輩から「学校の統廃合について教育委員会と協議する場があるから、参加してみないか?」とお誘いを受けました。どうやら先輩はSNSなどで、僕が日本の様々な地域で課題解決の仕事をしているのを見てくれていたようです。

 

 

協議会は難航を極めました。

 

地域住民側の参加者は年配の方が多く、出てくる話は行政への不満ばかりでした。


・「この辺りを市街化調整区域に指定しているから、人の流入が無いんだ」

・「この土地をこんな過疎地にしたのは行政の責任だ」

という意見が多かったと思います。

 

僕も地域住民なので、そう言いたくなるのも理解できますが、第三者視点で客観的に見ると、これでは話が進まないと感じました。

 

この会議は合計3回実施されました。

 

僕は最初の2回、何も発せず聞き役に徹しました。まず僕自身が状況を全く知らなかったので、地域住民と教育委員会それぞれの考えをヒアリングする必要があると感じたからです。

 

総合して地域住民の想いをまとめると「できれば学校は存続させたいが、やり方が分からない」でした。

 

その想いを汲み取り、3回目の協議会の際に、僕は解決策を提案しました。

 

課題やネガティブの切り取り、転換

既成概念にとらわれず強みを発掘する

ブランディングの基本は、そこにしかない強みを発掘・再編集し最大化することです。僕はまず、この学校ならではの強みを考えました。

 

 

①「小規模特認校制度」

 

これは、栃木市在住であれば学区外からでも通える学校として認められる制度です。通常は自分が住む学区の小学校に通わなくてはいけませんが、この制度で栃木市全ての小学生がターゲットになります。

 

現在も38名の児童の1/3以上がこの制度を活用し、学区外から通っています。
つまりその1/3の親御さんは、この学校に何か魅力を感じて通学させているか、何かの課題解消のために通わせていることになります。

 

 

②「小規模校」であること

 

大体の方は、大規模校の方がコミュニケーションの観点から考えて「良い」と考えます。

しかし本当にそうでしょうか??大規模校だからといって、全員とコミュニケーションしませんよね?常時、コミュニケーションをとるのは限られた人数です。

 

もちろん現状の38名は少ないとは思います。しかし数百人もの学校に通ったからといって、数百人とコミュニケーションする人は中々いません。自分に近い限られた人だけでしょう。

そう考えると、コミュニケーションアドバンテージは、さほど無い気もします。

 

学力はどうでしょうか。

 

授業において、40人に1人の先生と、5人に1人の先生、どちらの方が深い学びに繋がるでしょうか?

明らかに後者というのは理解いただけると思います。

 

5人に1人の先生は家庭教師に近い状態になる。5人であれば、毎授業全児童が前に出て発表する時間を作れます。つまり授業中に現在地点を確認できることになり、置いてきぼりになる児童は少なくなると考えました。

 

40人も居たら全員の状態を授業中に把握するのは至難です。40人全員が発表するだけでも時間が足りません。


これは数値化されていませんが、国府南小の児童は中学校に進学すると、他校生よりも学力が高いと聞いています。

 

 

責任感も違います。

 

例えばクラス委員。人数が多い学級だと、委員をやる人とやらない人が出てきます。つまり誰かに役割を任せられる環境になっています。自ら主体的に動く人間になるためには、多すぎる人数環境は思考停止に陥ります。


国府南小は、少人数のため必ず何らかの役割が割り当てられます。誰かに任せきりで自分は傍観者のままでいることができない環境です。

 

これが当たり前の環境としてあるのは強みです。役割を持って自ら動くことが当たり前になり、自らの役割を全うする「責任感」が生まれると考えました。

 

 

③「学校存続が地域課題に直結している」

 

この地域は前述の通り、新しく家を建てにくい場所なので、住民も増えにくい環境です。それにより児童数も減少し、学校存続の危機に陥っています。


もし国府南小が統廃合してしまったら、この地域に子供の影がなくなります。つまり現在よりも「過疎のイメージ」が強くなります。

 

このイメージが曲者です。実態はそこまで変化がなくても、学校がなくなったことで「衰退感」がより強くなり、住民たちの中で更に諦めムードが強まります。住民たちが諦めたら終わりです。


つまり、この小学校が活性化できるかできないかが、今後の地域の未来にも関わってきます。

 

だからこそ、今踏ん張るべきだと考えました。いわゆる「背水の陣」です。もうやるしかない状態なので、力を集結できれば新しい価値が生まれると思いました。

 

遠くからでも通いたくなる価値を

 

いよいよ3回目の協議会です。


僕が提案したソリューションは「この学校でしか体験できないクリエイティブな教育を提供して児童数を増やす」でした。この活動を「oneclass」と名付けました。

 

なぜ「クリエイティブ教育」に設定したかというと、

・僕自身がクリエイターであることから、その方向の知見がある。
・現教育とは別に「自ら課題を設定し、解決策を考える発想を身に付けること」は、これからの時代を生き抜くために必須な能力だから。
……になります。

 

どうすれば多様なクリエイティブが学べるプログラムなるかを考えた結果、講師は僕だけでなく、様々な専門分野の外部のエキスパート達に依頼しようと考えました。

・国府南小に通わないと体験できない教育にすることで、そういった教育に興味関心がある親御さんが「学校選びの選択肢の一つ」として考えてもらえる。

 

・他の学校では体験できない授業をおこなえば、メディアにも取材されやすくなるので、学校のPRにも繋がります。



現在も県内外問わず、僕が信頼する方々に様々な授業をお願いしています。

ちなみにoneclassという名前は

児童・先生・地域住民・外部協力者が一つの同じクラスの仲間として、課題を解決するために活動をする」という想いの元に名付けられました。

 

上下関係もない。それぞれの得意なこと、できることで貢献し、一緒に地域活性を目指す。そのプロセスこそが、この地域を存続させることになると考えています。

 

この企画を協議会でご提案させていただいた時、約半数の方は半信半疑な様子でした。「本当にそんなことできるのか」「無理じゃないのか」と思っていらっしゃるのが雰囲気で伝わってきました。

 

年配の方に提案する際の「あるある」ですが、やはり年齢差が大きいと生きてきた時代が違うため、企画書だけで伝えきることは難しいので、僕はとりあえず目の前でやって見せるようにしています。


その場で押し問答しても、見ている世界が違うので平行線になってしまう。その風景を実際に見せるしかない。目の前でその光景を見ていただき、理解していただくという順序になります。

 

僕は教育委員会に「まずチャレンジさせてください」とお願いをし、校長にもプレゼンして同意を得て、oneclassをスタートさせました。

小規模校はポジティブだ

少人数小規模はネガティブに捉えられますが、少ないからこそフレキシブルな意思決定が可能です。柔軟に動きやすく、決済者も少数のため意思決定もスピーディーです。

 

僕が提案する企画も、実現まで短時間で到達します。そのスピード感こそ、熱量を下げることなく、プロジェクトを継続できる秘訣でもあります。

 

校長を始めとした先生方のご理解があるからこそのoneclass。先生方とも学習指導要領の観点から、一緒に授業の細部について議論を重ねています。

 

人数を増やすことはもちろん目的ではありますが、プロセスを共有し、現状を打破するための同志として、先生方ともお付き合いさせていただいています。

 

事例・活動紹介(対象説明、取り組み内容、目的、課題)

①コミュニケーション

 

2018年度から本格的にoneclassを導入するその前に、2018年2月に一度テストとして、コミュニケーション力をアップさせる授業を実施しました。

 

最初に、コミュニケーションにフォーカスした授業をしたのには理由があります。

 

国府南小に子供を通わせる親御さんの心配で多いのが「栃木市で最も小規模な小学校を卒業して進学する中学校が、逆に栃木市で最も大規模な中学校であるため、その人数のギャップの中で、上手くコミュニケーションがとれるだろうか」というものでした。

 

 

僕はまず親御さんの心配事を少しでも軽減できればと、人数に関わらず上手にコミュニケーションが取れるようになることを目的とした授業にしました。

 

もちろん一度だけで大きな変化はみられないかもしれませんが、継続することで少しずつ成果が見え始めています。

 

 

そして2018年度からこれまで、様々な授業にチャレンジしてきました。

②黒板アート授業

 

普段授業で使用する黒板をキャンバスにして、デザイナーと文星芸大生と児童が一つの大きな作品を描きました。

 

いつもと違った使い方をする事により、物事を違った視点から見ることの重要性を感じてもらう。プロや芸大生が描くハイクオリティーな作品を間近で見ることにより、感性を伸ばすきっかけになる。作品としての完成度を高めることの重要性などが体感できる授業です。

また、大きな作品の一つに自分の描いたものが入るという、自己肯定感や達成感を感じて欲しいと思いました。


デザイナーは都内で活躍している方、芸大生は宇都宮にある文星芸術大学の現役学生。クリエイターの強力なサポートのもと、児童たちにかつてない体験を提供できました。

③課題解決授業

 

学校や地域の課題解決に取り組む授業です。

 

2018年度は衰退しつつある地域のお祭りを盛り上げるための企画、2019年度は国府南小の良さを全国の同じ名前の学校にPRしようという企画でした。

 

 

2018年度のお祭りを盛り上げるための企画

最終的にお祭りのPR動画を自分たちで作ることになりました。

 

まずフィールドワークをしてお祭りの良さを発掘、そこから動画を作るために、ストーリーを考え、絵コンテを描き、セリフを考え、カメラワークも自分たちで考えてもらいました。

 

講師は始めにやり方とツールになるものを提供し、あとは児童に任せます。するとこちらが想像していたより、児童たちの飲み込みが早く、一人でも上達していきました。

 

授業時間の都合で動画の撮影と編集は講師が担当しました。子供たちは動画を作るプロセスを経て、クリエイティブの基本的な考え方や、実際のプロセスを経ることから、普段の授業とは別の体験を提供できました。

 

 

第二部へ、つづく。


ワンクラス とちぎのしゅし 栃木市

いかがでしたか?

課題に対して発見から解決策のプロセスをご紹介いたしました。何らかの気づきがあったなら嬉しいです!


第二部では、2019年度の活動の内容、そして「oneclass」を通じて起こった「変化」を中心にご紹介して参ります。

ネガポジ転換論・ローカルブランディング とちぎのしゅし 栃木県



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青柳徹

この記事を書いた人

青柳 徹

「ネガポジ転換論」担当
県南エリア出身
栃木市を拠点とするデザイナー。ブランディングとグラフィックデザインを用いて多様な課題解決プロジェクトを展開中。
「ローカルの小さなチャレンジを応援しまくり、そこにしかない独自の価値を生み出したい!」

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