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2017-7-17

池上知恵子(ココ・ファーム・ワイナリー専務)|tochigi gene vol 3



 

3、園生に教えてもらうもの

 

◆どんな点で、苦労されていますか?

 

今でも大変ですし、これからも大変でしょう。

 

ある時、雹(ひょう)が降って、葉っぱや新芽がやられて、葡萄が全滅。わたしやスタッフは真っ青。相手が自然とはいえ、損害額は数百万円なんて事もありました。

 

また、2003年に火災になり皆さんにご心配をおかけしました。1984年に最初にワインづくりをはじめた葡萄小屋や、前年4月にオープンしたばかりのカフェも跡形もなく燃えてしまったんです。

 

昭和33頃、父や当時の足利市立第3中学校の生徒さんたちが山を開墾して葡萄畑をつくり、昭和44年こころみ学園ができました。

 

もともと、こころみ学園で果実酒製造免許を取りたかったのですが、こころみ学園では酒税の関係もあって免許を申請できませんでした。昭和55年こころみ学園の考え方に賛同する父兄たちの出資によって、有限会社ココ・ファーム・ワイナリーが設立されました。

 

この有限会社が果実酒製造免許を申請し「ワインを造り、ワインを販売し、そこでワインが飲めるように」と、自然の流れでできることを増やしてきましたが、この場所は市街化調整区域だった。火事の後は、たくさんの方に応援していただき、足利市が栃木県に開発の許可を得てくださいました。

 

そうして、こころみ学園の葡萄畑で葡萄を作り「ワインを造り、ワインを販売し、ワインが飲めるように」なりました。

 

→自然相手で想像できない事や、絶望的に大変な事も起こる中で、色々な方達に支えられながら、前に進まれてこられたのですね。

 

ほんとうに、たくさんの方に支えていただき、歩んでくることができました。

 

ココ・ファーム・ワイナリー 池上知恵子 ブドウ畑の上から 栃木足利 

 

 

教えてもらう事が多い。

 

雹(ひょう)で私達が落ち込んでいる時も、いつものように「あしたがんばんべぇ」といいながら園生たちが山を下りてきます。そして、食堂でたくさん食べてぐっすり寝る・・・。

 

園生達と自然のなかでワインを造っていますと色々なことが起きます。でも自然に対して「なんてことをしてくれたんだ」とか「雹なんか降らなければいいのに」といっても、どうにもなりません。不安に打ちのめされるより「いっぱい食べてぐっすり寝る」その方が生物としてまとも。生き物として正しいと思います。

 

こころみ学園の園生達は、社会で言われている「成功体験」も「人から褒められること」も少ないかもしれません。でも園生は、誰のせいにもできない障害を抱えながら、3ヶ月おきの買物や1年に一度のバス旅行を楽しみに、泣いたり笑ったり、喧嘩したり仲よくしたり・・・。そんな園生には困難を従容として受け止めることを教えてもらっているような気がします。

 

いいこともあれば、悪いこともある。悪いことばっかりではないし、いいことばかりは続かない。有頂天になることもないし、卑屈になることもない。

 

うーん。考えさせられますね。

「何が良くて、何が悪いか」。我々が喜んだり、落ち込んだりしている基準が正しいとは言えないのかもしれませんね。「人間とは」「生きるとは」という問いに対して、革新的な気づきを与えられることもあるんですね。

 

ココ・ファーム・ワイナリー 葡萄畑 斜面 

 

 

◆「受け止めるしかない事」を受け止める為に、理解しておくべき事はなんでしょうか?

 

「しょうがない」とあきらめざるを得ない事はたくさんあります。「理解」できる事も、できない事も含めて「寄り添う」といった感じでしょうか。

ただそこにいる。

 

「まずしさ」や「不便さ」を取り除こうとして、近代社会は進歩してきました。ただ、その中で生まれた基準が、逆に、喜びも生めば、苦しみも生んでいる。「ただ生きる」という事は、現代では遠回りかもしれないけど、人間が生きる上で「大事」なんじゃないでしょうか。

 

→目の前の事態や相手に対して、「理解」できる事も、できない事も含めて「寄り添う」。楽観や悲観ではなく受け止める。楽観や悲観を生む、元にある基準や考え方から見直してみる価値はありそうですね。

 

「4、父から引き継いだもの」  へ つづく




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石川智章

この記事を書いた人

石川 智章

「栃木のしゅし」総合統括
県南エリア出身

ライフデザイン、WEBマーケティングの分野で実績を出し、都内ベンチャー企業の経営を歴任。親の闘病を機に栃木と東京の2拠点生活を開始。

栃木の魅力を「住む視点」と「観光する視点」から再発掘。人がイキイキする仕組みを考えます!

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