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2020-6-5

ライター編・コロナ禍の東京より「コロナで変わる事・私たちが変える事」Vol,3



ライター 栃木 栃木のしゅし

はじめまして。フリーランスの編集者・ライターとして活動している山越栞(やまこし しおり)です。

 

出身は栃木県の日光市。

 

大学進学のために上京して以来、少なくとも毎月2回は地元に帰省する生活を送ってきた私ですが、コロナウイルスの出現によって状況が一変しました。

 

コロナ禍の生活の変化は、地域によっても異なるはず。

 

そこで、ここでは現在私の目の前にある東京での日々や、それによってもたらされたものについて綴っていこうと思います。

 

 

「先の見えない」日々は徐々にやってきた

 

「来年はどんなことしてるだろうね」
去年の暮れ頃、友人たちと呑気にそんな話をしていました。

 

20代後半、仕事が楽しくて、同志のような友人も増えて、2020年は東京オリンピックの年で、そのなかを生きる私。大変なことがあっても、この歳にこの場所で、この仕事をして生きている自分に満足していました。

 

今の私にとって最も重要な判断基準は、自分で選んだ道への「納得感」です。

 

全て望み通りにすることは難しいけれど、自分の選択に納得してさえいれば、何かがあっても周りのせいにすることなく生きられると思うからです。だから「来年はどんなことしてるかな?」と、ちょっとくらい先が見えないのは、楽しみな部分を意味するものでした。

 

しかし今の状況を踏まえて考えると、それは「なんとなくこうなりそう」と見当がつく上で成り立つものだったのかもしれません。

 


中国・武漢市でのコロナウイルスに関するニュースが目立つようになった頃は、それらをどこか別次元の出来事のように感じていました。インフルエンザの新型のようなものかなと思ったし、そもそもインフルエンザにかかったことがほとんどないので、当事者意識が全くありませんでした。


とはいえ、街を歩く人々がどんどんマスク姿になっていく東京。

 

マスクともあまり縁のない生活を送ってきた私にとっては、少し異様な光景に映りました。マスクの品薄が続き、マスクなしでは外に出られない状況にもなってきた頃、首都圏ロックダウンの噂が流れはじめます。

その頃にはヨーロッパやアメリカの状況が見えてきていたので、やっと私もコロナウイルスが別次元の出来事ではないと危機感を抱くようになりました。

 

その後、東京都は3月末に外出自粛のムードが高まり、会社員でない私には必要早急の外出予定がないため、この2か月間は大半を自宅で過ごしています。

 

ただありがたいことに、私の場合は仕事への影響がほとんどなく、リモートワークで全て完結できていますし、収入も減っていません。

 

コロナ禍の東京生活

 

しかし、こんな状況なので栃木での予定は全てキャンセルすることに。

 

正直なところ「栃木に帰れなくて寂しい」という感情よりも、「自分がウイルスを媒介してしまうかもしれない怖さ」の方が何倍も大きかったです。

 

イタリアでは自粛生活のはじめに帰省した人々がウイルスを媒介してしまい、高齢のご家族が感染してしまったケースがあると聞き、そんなの耐えられないと思いました。

 

未来をみんなで守るために、東京都内の人は全員「自分が保菌している」前提で生活をすること。これは、本当に大切なことなんだと思い知りました。

 

ただ怖かったのが、敵が全く見えないゆえに、敵でないはずの人間同士が疎遠になっていく空気感です。もともと人との温かい関わりが好きなので、「お互いのことが大切だから距離を取る」という感覚に慣れるまで、少し時間がかかりました。

 

自粛生活のなかで唯一直接コミュニケーションを取れるスーパーの販売員さんや配送業者の方にはできる限りの好意を伝えたいけれど、マスクで口元が隠れていて笑顔が通じにくく、なんとも歯痒い気持ちになりました。

 

そんななかで大事だったのが、コロナ禍の鬱々とした空気に飲み込まれないよう、寂しさや不安をできる限り遠ざける工夫です。

 

料理をしたり、本を読んだり、部屋を模様替えしたり、映画を観たり……

 

「自分のごきげんは自分でとる」をモットーに、今だからできることにあれこれ取り組み、私の自粛生活はそれなりに充実したものになりました。

 

 

だからこそ私の場合は、本人よりも「私を心配してくれる人たち」のほうが、精神的負担は重かったんじゃないかと思っています。

 

テレビのニュースで都内の感染者数が連日報道され、逼迫する医療現場や、行政への対応に不安が募る国民たちの様子が映し出されるのを目の当たりにして、特に家族は不安になったはず。

 

「親孝行の為にこっちに帰ってきてあげなさい」という旨の連絡を親以外からもらったりもしました。

 

「大切だから距離を取る」という正義観がゆらぎ、何を以って親孝行なのかが分からなくなり、そもそも親の安心のために生きることが親孝行なのかも分からなくなり、どんどん掘り下げていくと、「東京で生きていること自体、正しい選択だったのか」を改めて考えることにつながりました。

 

18歳の私が安易に「東京に行きたい!」と思っただけで、28歳の私は、今ここで生きる意味を見失ってはいないか。コロナ禍の自粛生活は、「東京にいる意味」を改めて問い直す時間でもあります。

 

聞くところによると、都心部からの地方移住の需要が高まりつつあるとのこと。

 

「なんで東京でこんなことしてるんだろう」「東京にいることで大事なものを失っているかもしれない」そうやって我に返る人がこの機会に出てくるのも理解できます。

 

でも。

 

冒頭で書いた通り、私の人生の判断基準は「納得感」です。考えれば考えるほど、今の状況をもってしても、私は納得して東京で生きています。だから、この自粛生活を乗り越えていく必要があるんです。

 

東京とローカルと自分の居場所

 

そもそもフリーランスになったのは、東京と栃木をもっと気軽に行き来できる働き方がしたいと思ったことも理由の1つです。

 

これは、今も同じ。

 

わたしにとって「どこで生きるか」は「どう生きるか」と同じくらいに重要です。

 

東京だけで生きるつもりはないけれど、少なくとも30代前半くらいまでは東京に片足をつけて、シティな刺激と学びと楽しみを享受していきたいです。

 

だからこそ、コロナウイルスによってもたらされた制限は、いろんな場所と素敵な関係を育んでいきたい自分にとって、プラスになる変化や学びもありました。

 

<オンラインの恩恵で地方も東京もフラットに>

 

打ち合わせも取材も飲み会も、原則として全てがオンラインに変えざるをえなかった東京では、場所の制約がある意味で消失しました。

 

東京で生活する私にとっては、遠い地域に住む友人とのおしゃべりや、栃木を拠点にする方とのお仕事も、東京にいる人と同じ、フラットな関わりになりました。

イベントや勉強会もオンライン化が進んでいるので、仮に今後自分が栃木に長期滞在をすることになっても、「遠いから参加できない」という理由は少なくなりそうです。

 

<心の距離は物理的距離ではない>

 

なかなか会えないからこそ、親しい人たちとこまめに連絡をとるようになりました。

 

私のもとに届くのは、家族から送られてくる故郷の写真や、お世話になっている方からのはがきのお手紙、よく遊んでいた友人からの「元気?」で始まるたわいもない連絡などなど。

 

そんな周囲の優しさのおかげで、離れているから関われないのではなく、コミュニケーションの形を変えて楽しむことを学びました。

 

ただ、離れた相手とのコミュニケーションにはITリテラシーの有無も影響しそうです。家族とオンラインご飯をしたりもするのですが、これは実家に妹がいるからできることでもあります。

 

<豊かさの中で取捨選択をする意思>

 

私の場合、仕事の量は減っていないのに余暇時間が格段に増えたことにまず驚きました。

 

それまでの生活を振り返ってみると、打ち合わせ先や気になる場所にあちこち移動していたり、週に何度も飲み会があったりと、「忙しい」を自分で作り出していた気がします。

 

生活が制限されたことでかえって心が穏やかになったのは発見で、なんでもすぐに手に届くような環境にいるからこそ、きちんと取捨選択することが必要なんだと改めて感じました。

 

SNSを見ていても、都内在住の人は、特に暮らしの大切さを再認識しているように思います。少しずつ制限が解除されてきているとはいえ、「何を選んでここで暮らすか」という観点は大事にしたいです。

 

分からないなりに生きていく

 

緊急事態宣言が解除され、日常が少しずつ戻ってきているようにも錯覚してしまう今。そんなに簡単にはいかないと思いつつも、あれこれ自由にできる日々がすぐにやってくることを期待してしまう自分もいます。

 

一番気になっているのは、「いつになったら憚らずに栃木と東京を行き来できるんだろうか」ということ。安心できる世になったら、しばらくの間は実家で過ごしてみたいなとも思っています。

 

そして、コロナ禍で培われたリモートワークの動き方や時間の使い方が、栃木で暮らしても成立するのかを確かめてみたいです。

 

緑に囲まれて、鳥のさえずりで目覚め、愛犬におはようの挨拶をして、マイナスイオンの中で原稿を書いて、家族と一緒に美味しいご飯を食べて……

 

そんな少し先の楽しみを思い描きながら、もう少し、私は東京で生きていきます。




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山越 栞

この記事を書いた人

山越 栞

企画・編集・ライティング
日光エリア出身・東京在住
フリーランスの編集者・ライター。出版系の制作会社にて書籍や雑誌、web媒体の編集やディレクション業などを経験後に独立。現在はwebメディア運営、冊子の編集、ライタースクール講師などを中心に活動中。

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