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風間教司(日光珈琲社長)|tochigi gene vol 2

 

 

 

風間教司 (かざま きょうじ)

日光珈琲代表
県央エリア 栃木県鹿沼市出身

 

24歳の時に、人通りのまったくない自宅隣の「空き家」を、自分の手で改装し、珈琲の事も良くわからない状態からカフェを開業。徐々にお客様が訪れるようになり、いつしか「出店や開業の相談」にものる様になる。

 

結果として、その一帯に20店以上のお店ができ「ネコヤド商店街」が出来上がってしまった。小さな「開業」からスタートし、小さな「街づくり」を牽引してきた人。栃木県鹿沼市の日光珈琲社長|風間さんにお話をうかがってきました。

 

 

◆もくじ

 

1、ネコヤド商店街の成り立ち
2、ストーリー重視のカフェ経営(饗茶庵&日光珈琲)
3、自然な流れにそって作り上げたもの
4、「経営」そして「人や地域との関わり方」に関する今後の展望

 

1、ネコヤド商店街の成り立ち

 

◆現在の活動を教えてください。

 

カフェ「日光珈琲」を4店舗経営しています。(鹿沼市2店舗 日光市2店舗)
その他に、宇都宮市に雑貨屋「SöPö LUCA」(ソェポェ ルッカ)、鹿沼市でゲストハウス「CICACU」などの経営もおこなっています。


事業領域は、「カフェの経営」「珈琲の焙煎」や「珈琲豆の卸売業」「カフェ経営のアドバイス」など。
直近では、兵庫県に珈琲豆焙煎の会社を3社合同で設立しました。

 

◆本業以外の「ネコヤド商店街」や「地域活性イベント」などはどの様に展開していったのですか?

 

人の相談にのって、その人の課題を解決するお手伝いをしているうちに「今の形」が出来ましたね。カフェは人が集まる場となります。

 

そして人が集まると一つのコミュニティーが生まれ、様々な情報が入ってくる。相談をうける事が多いですし、「誰に何が出来るのか」という事も知る機会が多いんです。そこから自然と、「人と人を繋げる」ようになっていきました。

 

例えば、開業したい人に、空き家のオーナーを紹介したり。「作った物を売ってみたい」という人達と、市場(チャレンジショップ・マルシェ)を開催したり。興味と趣味から、ビジネス化するまでのお手伝いが多かったですね。本業じゃないけど(笑)

 

目の前の課題に、解決策という答えを出す。

 

開業をサポートした人達とは、今ではゆるーい繋がりです。入り込みすぎてもお互い疲れちゃう。お店を出した後は店長を尊重する。

 

初めの頃は、いろいろ口を出してきたんですが、今は相談されたら自分なりのアドバイスをする。今までやって来た中で自然とできたスタンスです。近所付き合いも一緒かもしれないですね。

 

基本は、「茶のみ話」から「課題」が共有され、どうするかの「答え」をだす。この繰り返しでした。その対象はいつしか「地域」の話も含まれるようになり、今では、行政や大手企業と一緒になって、観光や集客の為に「地域にどんなコンテンツを作っていくか」なども話しています。

 

◆なるほど。お話の中から「カフェのコミュニティーとしての機能」を改めて気づかされました。そして、風間さんは「課題解決の力」が長けていらっしゃるのですね。課題の範囲が地域にまで広がっていった要素として、「地域貢献」への想いを強くもたれていたのでしょうか?

 

そんな事ないんですよ(笑)「地元が大好きで大好きで!」っていう感じではありませんでした。どちらかといえば、「地域全体の活性から、自分のビジネスに恩恵があったらいいな」くらいに想ってやってきましたね。

 

◆合理的ですね。でも、結果的に、地域にとってもWINの行動をされていらっしゃる。

 

 

2、ストーリー重視のカフェ経営(饗茶庵&日光珈琲) へ つづく

 

 

 

 

 

2、「ストーリー重視」のカフェ経営( 饗茶庵 & 日光珈琲 )

 

◆どんな「想い」でカフェを経営されているのですか

 

田舎が嫌で東京の大学に行ったのですが、いざ就職となった時、地元に戻らなければなりませんでした。私は一人っ子なので、家を継ぐ必要があったんです。

 

どうせ鹿沼市に住むなら「自分が誇れる場所にしたい」という想いはあったものの、「食っていかなければならない」という現実がありましたね。

 

◆カフェの開業に至るまで

 

1度、「型にはまった事もやってみよう」と就職をしてみたんですけど、私には合わなくて。「もっと自分らしい事ができるんじゃないか」って、葛藤が続きました。

 

そこで、会社を辞める決意をして、フリーターになったのですが、やっぱり親から嫌がられたんですよね。それをきっかけに、腰を据えて何がやりたいか考えたのち、「人が集まれる空間を作りたい」という結論に至って、1999年、当時24歳でカフェをスタートさせました。

 

 

◆開業は、怖くはなかったのですか?

 

怖くは無かったです!
1つは、大学時代に、勉強というよりは、色々なバイトをしていて。それで結構稼いでました。その経験から「いざとなったら、何とか出来るだろう」というイメージを持っていましたね。

 

もう1つは、「3年やって無理だったら、就職するか、もしくは、別の道を歩もう」と決めていました。

 

◆多店舗展開ではなく、まず既存の一店舗を伸ばす。

 

2年目位でしょうか、経営が安定してきた時に、今後、どの様に展開していこうか考えました。選択肢は、2つあり、一つは「店舗を増やす」事。もう一つは「今あるお店を伸ばす」事。

 

私は、後者を選び、もっと多くの人に来てもらうためにどうすればいいかを考えました。そこでたどり着いたのが、この地域の魅力を高める事でした。「地域に魅力があればこの地に人は来る。この地に人が来れば、自分のお店にも人が来る。」というシンプルな考えです。

 

あとは、開業からずっと周りや地域の人に助けてもらっていたので、私も相談を受けたら、しっかり対応をしていました。地域という点では自然と繋がっていきましたね。

 

 

◆地理・歴史を学んでいたから生まれるストーリーという「視点」

 

人通りの少ない、実家の横の「空き家」でカフェを開業したので、はじめは、「観光地でもないのに無理だ」とみんなに言われました。ただ、当時の私はみんなと違う解釈で、「可能性」が少し見えていたんです。

 

観光地の例として、「神奈川県の鎌倉市」があります。では、「いつから鎌倉市は観光地になったのか?」私の仮説では、「鎌倉には歴史がある、その歴史が教科書にのっていて“有名だから”人が集まり、観光地となった」と考えたんです。だから、鎌倉には路地裏でもカフェを運営できる。

 

じゃあ、「鹿沼市には、歴史がないのか?」いや、我々が見ていないだけで、ちゃんとあるんですよね。だったら、その歴史をしっかり理解し、編集すれば、「いい点」や「魅力」が見えてくるじゃないかと考えたんです。私は一応、大学時代に地理や歴史を学んでいたので、ストーリーを作る事は嫌いではなかった。

 

◆変わるもの、変わらないもの。

 

今でも、経営において、「売上重視」か「ストーリー重視」かと言われたら、ストーリー重視。※ここでいうストーリーは歴史や流れ。経営戦略を作る際、売上重視だと「人が多く集まる場所」を選びがちです。

 

ただ、「人が多く集まる場所」というのは、時と場合によって変わってしまいます。逆に、「ストーリー」=歴史は変わりません。今までの流れを理解する事は、「これから」や「今」をどう作っていくかのヒントになります。カフェの2号店を出店する場所も、日光市にある今市を選びました。

 

当時、栃木の店舗経営論では「宇都宮や県南などの人口が多い所に出店していくべき」と言われていました。でも、私はその戦略にはのらず、「なぜ我々は鹿沼市で上手くいったのか?」その要因を考えていきました。その中で、鹿沼市は元々「宿場町だった」という歴史に着目をしました。

 

それならば「他にも昔の鹿沼市と同じような文化を形成している場所があるんじゃないか。」と考え「元々宿場町であった所」を探していきました。そして見つけたのが日光市の今市。その後も、日光珈琲は、日光例幣使街道にそって、カフェを展開していく流れになったのです。

 

WINWINや相互利益を軸とした先義後利の展開は素晴らしいですね。我々も同様のスタンスを大切にしてます。ストーリー重視という視点はとても興味深く感銘を受けました。

 

3、自然な流れにそって作り上げたもの につづく

 

 

 

 

 

 

3、自然な流れにそって作り上げたもの

 

◆経営をてがける中でターニングポイントはありましたか?

 

家族ができた事ですね。
3年が過ぎた時かな。カフェも自分1人なら食っていける状態になっていました。その頃、当時付き合っていた彼女に子供が出来たんです。私に家族を守る役目が生まれました。それからは「奥さんと子供を養っていける事業規模にする」という「次の目標」ができました。

 

そこで2店舗目を出店する事を決め、動いていきました。当時は必死でしたが、今となっては「成長する機会」となった、ありがたい出来事です。新たな出店に対する「費用感」や「必要な対応項目」などを知り、経営やマネージメントも覚えていった。「家庭を持つ感覚」を持てたのも大きかったです。

 

「自然な流れの大切さ」みたいなものも感じました。

 

2店舗目の準備からオープンまで3年かかったんです。
解体しようとしてた空き物件をみつけ、整備中は安く貸して頂き、リノベーション費用もオープン後に段階的にお支払する形で相談させてもらいました。1店舗目と同様に、コストを抑えるため自分で店舗をリノベーション。

 

今市へ通っていく中で、地域の人たちと話す機会も増えていきました。見ず知らずの土地の事も理解していけたし、地域の人達にも私の想いやストーリーも伝えられたんです。

 

いつしか、皆さまが「まだオープンしないのか?」と心配してくださる様になり。(笑)オープン後も、「最初のお客様」として通ってくださったのが「いつもお話ししていた方達」。この様な、段階的かつ自然な流れで店舗を展開できた事は、とてもいい経験になりました。

 

仮に、お金を借り入れて、急に店舗を展開をしていたら、その後の経営結果は違っていたかもしれません。3年という歳月をかけた事は、一見、無駄にも見えますが、とても重要な時間だったと思います。

 

ここでも、ご自身に起こる出来事に対して、その都度「答え」を出してこられたのですね。「自然な流れ」というのが印象的です。

 

 

4、「経営」そして「人や地域との関わり方」に関する今後の展望 へつづく

 

 

 

 

 

 

4、「経営」そして「人や地域との関わり方」に関する今後の展望

 

◆栃木県はどんな印象ですか?

 

豊かな所ですね。おかげ様で、私も「のんびり」できてます。広大な自然。東京からの距離。工場立地など、むしろ、恵まれすぎているのかもしれません。その影響で「現状をより良くしよう。」という「想い」が生まれにくいようにも思います。

 

これは、時代が変化していく中での自主的な「危機管理」という視点では、甘いのではないかと危惧もしています。「自分たちで作り上げている物ではない」という自覚をしないまま、現状に甘んじて冒険をしない。

 

この状況は「もったいない」ですし、いざという時には「危険」です。この点に関して、自分達が「風穴を開けていけたらなぁ」とは思っています。

 

◆あえて、おうかがいしますが、栃木で活動していく中で「嫌な事」はありましたか?

 

んー。あえて言えば、「目立つ」と、事実ではない事を「勝手な解釈」で話される事もあります。あいつだけ得をしているだとか。(笑)基本、気にしないようにしています。言われているうちが花なんじゃないかってね。

 

自分は動かず人を非難する人は「視野が狭い」所もあるでしょうし、目の前にある「危機」が見えていないだけだと思うんです。仮に、私が「そういった人」の批判を恐れて「行動しない」という選択をしても、「危機」は変わらず迫ってきていますしね。みんなで倒れちゃっても、いい事ないでしょ。

 

あとは「地域の文句」も耳にする機会はあります。個人的には「嫌なら他の場所に住めばいいじゃないか」と思ったりもしますが、そんな時は、私自身「地域を見つめ直して、地域の価値や魅力を見い出す」ようにはしています。そして、文句を言っている人にもその視点を伝えてみる。ものへの見方次第で感じる事も違うんじゃないかと。

 

なるほど。地域や組織などの「共同体」で、一定数そういった人がいらっしゃる点は、どこも一緒なのかもしれませんね。

そんな方々にも、視野や視点の共有を試みて、共通理解の道を探られているのは、凄い事ですね。

 

 

 

◆風間さんの、今後の目標や夢を教えてください。

 

これからは「自分だけ」では出来ない事にチャレンジしていきたいです。今までは「自分」や「自分の会社」でやる事が多かった。今は「自分の限界」も少し感じています。

 

今回設立した兵庫の会社は、3社合同で作りました。これからは複数社や、複数世代で協力して、事をなしていきたいんです。それぞれの世代でできる事がある。30代20代の人の活躍も見ていて楽しいしね。

 

小さい視点で、「対立」したり「足を引っ張り合っていても」意味がないでしょ。より広い視野で「日本全体」や「世界」を見ていきたいですね。戦国時代でも大名は、他の大名と手を組んできた歴史があるんですから。

 

◆経営において、利益、思想、サービス、商品、など、何を追求していきますか?

 

欲を言えば、全てですね。
ただ、画一化しすぎない事も大切にしたいです。「一見無駄に見える事」も大切にしたい。伝統や個性ってそんな中にあるんじゃないでしょうか。「日々の生活の中から生まれた発想」は、どの地域や人にもあります。それをしっかり見出し、尊重していきたい。

 

「世界の中での日本、日本の中での栃木、栃木の中での鹿沼」サービスにしたって、都市にしたって、画一化されすぎても良くないし、面白くないでしょ。

 

先月、ヨーロッパに2週間行って、再実感したのですが、彼らは経済発展の限界を知っていると感じました。画一化、効率化をし続けても経済的な、限界が訪れる。

 

その場合、何を大切にしたいか。何を残したいか。一見、無駄にあたる所に価値がある気がします。お金も大切。ただ、そのお金を持って、何をしたいか、どんな暮らしをしたいかは、もっと大切だと感じました。

 

私も、経営している中で、油断すると「画一的」になりそうな時があるので、できるだけ、「フラット」に「柔軟性」をもって物事を見れる様に意識しています。「無責任ではない身軽さ」はキープしたいですね。

 

 

◆最後に、自分の仕事や道を探している方へ一言お願いします。

 

私も探してるんですよねぇ~(笑)
今の形は結果でしかありません。自分が「夢中になれる事」を見つけて、「やりきる事」が大切です。この繰り返しだと思います。

 

◆では、夢中になる為にはどうしたらいいでしょうか?

 

なるほど、そうかー。んー(笑)
私の場合は、「目標設定」ですね。珈琲が好きなら、自分で「お店をやってみたい」だとか「農園をやってみたい」と思ったっていい。自己満足で「始めた事」に対して、「売上」だったり「他者からの評価」だったり「いくつかの評価基準」が出てきます。

 

その基準に対して目標を設定して、夢中になればいいんじゃないでしょうか。「意味」は後からついてくる事もありますよ。自然と「次の目標」も現れるし!

 

◆ありがとうございました!

 

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